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急いで家を出てきたせいでコンビニに寄る時間もなく、今日は大学にある購買に来てみたがほとんどの商品が売り切れておりあったのは人気のなかったコッペパンのみ。
これはこれで美味しいのに何故売り残ってしまったのか。
「しーまーぬーきー!」
何処かから俺の名前を呼んでいるような声が聞こえるけど、気のせいだろう。
きっと、慣れない日々をここのところ送っているから疲れているに違いない。
今日は早く帰って早く寝よう、そう思って足を早めた瞬間、背中に大きな衝撃を受けて手元にあったはずのコッペパンが地面に落ちた。
「あ」
「ご、ごめん!嶋貫?!そっち俺が食べるから嶋貫こっち食べて!」
俺よりも慌てる荒巻さんに、落ち着いてくださいと声をかけ荒巻さんの持っているあたかも若者に人気のありそうなパンに目が行った。
確か教授が奥さんに買ってきてと頼まれていたもので、パンの間に生クリームが沢山詰まったパン。
確か名前は………。
「袋に入っているのですからそんなに慌てなくて大丈夫ですよ。それよりそのパンの名前何でしたっけ?」
「マリトッツォのこと?」
「あぁ、そうです。ありがとうございます」
「何のこれしきのこと!じゃなくて、嶋貫酷いじゃないか!呼んだのに返事してくれないなんて!」
「幻聴だと思ってました、すみません」
「謝る気持ちが全く感じられない謝罪って初めて!」
「良かったですね」
「良くない、良くないよ嶋貫!」
ひとり楽しそうな荒巻さんを置いて研究室に戻ろうとしたら、また後ろから抱き着かれた。
この人、ここが大学の中庭だって認識ないのだろうか。
「ちょっと荒巻さん、離してください」
「嶋貫が一緒にお昼食べるって言ってくれなきゃ離れないもん!」
「一緒にお昼食べる、ほら言いましたよ?離してください」
「そうだけどそうじゃない!」
何なのだ、一体。
いい加減周りからの視線が痛いから離れてほしいのだが。
「しーまーぬーきーのーいーじーわーる!」
「意地悪でも何でも言って下さって良いですから、いい加減本当に離してください」
腹部を掴む腕を引っ張るも外れず、今朝もそうだが見た目より力が強い。
こんな所、教授に見られたら絶対に馬鹿にされると思って渡り廊下を見てみたら教授と目が合い、その場から消えたくなった。
「嶋貫?どうしたの?」
「消してください…」
「え?!何を?!」
誰か俺の存在をここから消してください。
これはこれで美味しいのに何故売り残ってしまったのか。
「しーまーぬーきー!」
何処かから俺の名前を呼んでいるような声が聞こえるけど、気のせいだろう。
きっと、慣れない日々をここのところ送っているから疲れているに違いない。
今日は早く帰って早く寝よう、そう思って足を早めた瞬間、背中に大きな衝撃を受けて手元にあったはずのコッペパンが地面に落ちた。
「あ」
「ご、ごめん!嶋貫?!そっち俺が食べるから嶋貫こっち食べて!」
俺よりも慌てる荒巻さんに、落ち着いてくださいと声をかけ荒巻さんの持っているあたかも若者に人気のありそうなパンに目が行った。
確か教授が奥さんに買ってきてと頼まれていたもので、パンの間に生クリームが沢山詰まったパン。
確か名前は………。
「袋に入っているのですからそんなに慌てなくて大丈夫ですよ。それよりそのパンの名前何でしたっけ?」
「マリトッツォのこと?」
「あぁ、そうです。ありがとうございます」
「何のこれしきのこと!じゃなくて、嶋貫酷いじゃないか!呼んだのに返事してくれないなんて!」
「幻聴だと思ってました、すみません」
「謝る気持ちが全く感じられない謝罪って初めて!」
「良かったですね」
「良くない、良くないよ嶋貫!」
ひとり楽しそうな荒巻さんを置いて研究室に戻ろうとしたら、また後ろから抱き着かれた。
この人、ここが大学の中庭だって認識ないのだろうか。
「ちょっと荒巻さん、離してください」
「嶋貫が一緒にお昼食べるって言ってくれなきゃ離れないもん!」
「一緒にお昼食べる、ほら言いましたよ?離してください」
「そうだけどそうじゃない!」
何なのだ、一体。
いい加減周りからの視線が痛いから離れてほしいのだが。
「しーまーぬーきーのーいーじーわーる!」
「意地悪でも何でも言って下さって良いですから、いい加減本当に離してください」
腹部を掴む腕を引っ張るも外れず、今朝もそうだが見た目より力が強い。
こんな所、教授に見られたら絶対に馬鹿にされると思って渡り廊下を見てみたら教授と目が合い、その場から消えたくなった。
「嶋貫?どうしたの?」
「消してください…」
「え?!何を?!」
誰か俺の存在をここから消してください。
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