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「俺、ずっと好きな人がいて……その人に『好き』ってふざけながら何度も言っていたんです。でも、段々言うのが辛くなってきて、自分の中であと何回言ってダメだったら諦めようって思ったんです」
コップの中を見つめながら話す男性に、何となく明るく振る舞いなから冗談めかして『好き』と口にする姿が目に浮かんだ。
端から見ればまた言っているよ、と流しそうなそれは実は意味があったのだと誰も気付かなかった、いや気付かせないようにしていたのか、この男性は。
「その最後が………今日で」
ズズっと鼻を啜る音が聞こえ、近くにあったディックの箱を手渡した。
それをありがとうございます、と言って預かった男性は一枚取って鼻をかんだ。
「やっぱりダメだったって思ったら悲しくて……その場から逃げてきたんです」
人それぞれ、色んな恋をしているのだろうけど、身を裂かれるような、逃げたくなるような恋をする人が世の中には沢山いるだろう。
その中の一人が目の前にいる男性であり、過去に未だとらわれている俺でもある。
「逃げても良いと思いますよ。逃げるときはとことん逃げて、立ち向かえるようになれば良いんですよ」
「そう、何ですかね」
「そうですよ」
今の俺が言えたものではないけれど、目の前の男性は俺より若そうだし、まだ何とかなる可能性がある。
今は逃げていても、いつか立ち向かえる時が来るだろう。
「悔やむときは悔やんで良いです。泣きたいときは泣けば良いんです。ほら、悲しい話をいつまでもしていては折角暖まった身体が更に冷えてしまいますよ。シャワーでも浴びて身体を暖めて寝てください。そうすれば少しは頭がしっかりしてきますから」
丸まりかけた男性の背中を叩き、着替えなんて何処にあったか、と頭を悩ませた。
最悪コンビニでパンツだけでも買いに行くか、と悩んでいたら頭上から雨が降ってきた。
「………ありがとう、お兄さん」
いつの間にか立ち上がっていた男性に背後から抱き締められたが、抱き締めるというよりは大きな子供に抱き締められているような感覚だった。
コップの中を見つめながら話す男性に、何となく明るく振る舞いなから冗談めかして『好き』と口にする姿が目に浮かんだ。
端から見ればまた言っているよ、と流しそうなそれは実は意味があったのだと誰も気付かなかった、いや気付かせないようにしていたのか、この男性は。
「その最後が………今日で」
ズズっと鼻を啜る音が聞こえ、近くにあったディックの箱を手渡した。
それをありがとうございます、と言って預かった男性は一枚取って鼻をかんだ。
「やっぱりダメだったって思ったら悲しくて……その場から逃げてきたんです」
人それぞれ、色んな恋をしているのだろうけど、身を裂かれるような、逃げたくなるような恋をする人が世の中には沢山いるだろう。
その中の一人が目の前にいる男性であり、過去に未だとらわれている俺でもある。
「逃げても良いと思いますよ。逃げるときはとことん逃げて、立ち向かえるようになれば良いんですよ」
「そう、何ですかね」
「そうですよ」
今の俺が言えたものではないけれど、目の前の男性は俺より若そうだし、まだ何とかなる可能性がある。
今は逃げていても、いつか立ち向かえる時が来るだろう。
「悔やむときは悔やんで良いです。泣きたいときは泣けば良いんです。ほら、悲しい話をいつまでもしていては折角暖まった身体が更に冷えてしまいますよ。シャワーでも浴びて身体を暖めて寝てください。そうすれば少しは頭がしっかりしてきますから」
丸まりかけた男性の背中を叩き、着替えなんて何処にあったか、と頭を悩ませた。
最悪コンビニでパンツだけでも買いに行くか、と悩んでいたら頭上から雨が降ってきた。
「………ありがとう、お兄さん」
いつの間にか立ち上がっていた男性に背後から抱き締められたが、抱き締めるというよりは大きな子供に抱き締められているような感覚だった。
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