その日君は笑った

mahiro

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お迎え

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粗方部屋の掃除が終わった頃に例の彼氏が家に来たのだが、その顔が非常に恐ろしい。
見なかったことにして、扉を閉めたくなるくらいに。


「あの馬鹿どこ?」


声も怖いし目も怖いし、雰囲気も怖いし、俺が何をしたと言いたいけど、怖くて言えない。
宝生生きて帰れるよな、と心配しつつ変に彼氏へ刺激も与えたくない為身体を移動させてスペースを作れば、俺の返事など待たずに中へと入り床で寝ている宝生のもとへと向かった。
布団で寝かせるのもまずいかと思ってタオルケットしかかけてなかったんだが、それについても言われるか?
今まで言われたことはないけど。


「起きろ、このポンコツ」


「痛っ?!」


どこか叩かれたらしい音と宝生の声が聞こえ、部屋を覗いてみるも俺からは宝生の隣にしゃがみこんだ彼氏の背中しか見えず、2人の表情などは見えない。


「ほら、帰るよ。ったく、家帰ってみりゃ家には居ねぇし携帯には出ねぇし、何なの」


「お前が俺を置いてアキの所に行ったりするからだな!」


「アキちゃんと亮太の所だっつうの。誰が2人で会うなんて言ったよ」


痴話喧嘩は俺の部屋でなく帰ってからやってくれ。
俺はもう眠いんだよ、と言いたい。
言いたいけど、何言われるか分からないから言えない。


「ほらぶーたれてないでさっさと出るぞ」


「2人に会うなら俺も行きたかったぞ」


「今度は連れてってやるよ」


「約束だからな」


そこでようやく話がまとまったのか、ノロノロと宝生が起き上がり、彼氏に手を掴まれたまま玄関へと向かいそのまま出て行った。
その姿が見えなくなった瞬間、思わず大きな溜め息が出てしまうのは仕方ないだろう。
やっと片付いたし、今日はこのまま寝よう。
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