8 / 83
8
しおりを挟む
「何だよ」
あまりにもじっと見つめてくるので、尋ねてみればエディスは悩みながら言った。
「いやね、お兄さんの名前知らないなぁとか今更ながら思って」
そう言えばまだ名乗っていなかったか。
まだ『トリスタ』という国の側室の娘として隠れながらひっそりと生活をし、『イスマ』国の第一王子、ルネ・レニエを暗殺指示を受けながら国を出され、ルネ王子の婚約者として『イスマ』国へ向かい、『トリスタ』からのスパイと『イスマ』からの嫌がらせを受け、最終的には窓から飛び降りて死にかけたという本当はこれ以上に色々過去にあったわけなのだが、ここでは一旦割愛させていただく。
死にかける前まではレーヌ・ヴォーティエという名だった。
あのとき、ルネ王子や兵たちが私が飛び降りた所を目撃していたからヴォーティエ家や『イスマ』国の人々には私は亡くなったことにされているだろうから、この名を名乗ることは出来ない。
そのため、それ以降は別名を名乗ることにした。
男装しているときも、店で歌わせて貰っているときも同じ名前で、『トリスタ』の国の言葉で『暗闇』という意味を持つ。
「ミュライユ。ファミリーネームはねぇよ」
「ミュライユ君ね!」
「いや、旅してる都合で男装してるだけで女だから」
そう言えばエディスは驚きの表情と声をあげた。
完全に男と思われていたみたいだが、ノエリア王子に絞められそうだから、もし本当に男性が助けてくれたのだとしても二人きりで食事なんて行かないで欲しい、相手が可哀想だ。
あまりにもじっと見つめてくるので、尋ねてみればエディスは悩みながら言った。
「いやね、お兄さんの名前知らないなぁとか今更ながら思って」
そう言えばまだ名乗っていなかったか。
まだ『トリスタ』という国の側室の娘として隠れながらひっそりと生活をし、『イスマ』国の第一王子、ルネ・レニエを暗殺指示を受けながら国を出され、ルネ王子の婚約者として『イスマ』国へ向かい、『トリスタ』からのスパイと『イスマ』からの嫌がらせを受け、最終的には窓から飛び降りて死にかけたという本当はこれ以上に色々過去にあったわけなのだが、ここでは一旦割愛させていただく。
死にかける前まではレーヌ・ヴォーティエという名だった。
あのとき、ルネ王子や兵たちが私が飛び降りた所を目撃していたからヴォーティエ家や『イスマ』国の人々には私は亡くなったことにされているだろうから、この名を名乗ることは出来ない。
そのため、それ以降は別名を名乗ることにした。
男装しているときも、店で歌わせて貰っているときも同じ名前で、『トリスタ』の国の言葉で『暗闇』という意味を持つ。
「ミュライユ。ファミリーネームはねぇよ」
「ミュライユ君ね!」
「いや、旅してる都合で男装してるだけで女だから」
そう言えばエディスは驚きの表情と声をあげた。
完全に男と思われていたみたいだが、ノエリア王子に絞められそうだから、もし本当に男性が助けてくれたのだとしても二人きりで食事なんて行かないで欲しい、相手が可哀想だ。
1
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
男と女の初夜
緑谷めい
恋愛
キクナー王国との戦にあっさり敗れたコヅクーエ王国。
終戦条約の約款により、コヅクーエ王国の王女クリスティーヌは、"高圧的で粗暴"という評判のキクナー王国の国王フェリクスに嫁ぐこととなった。
しかし、クリスティーヌもまた”傲慢で我が儘”と噂される王女であった――
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる