オレに触らないでくれ

mahiro

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『宮永』の……

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オレは中に入れないから外で二人の様子を伺うことにしたんだけど、その様子が不審者に見えたからなのか幸輝に不審なものを見る目で見られました。
いやほら、仮にも嫁入り前の女の子と男の子が二人きりなわけだから気になるでしよ。
それに杉本ならまだしも『宮永』だし。
見た目で騙されてくれれば良いけど、声でアウトだったら『宮永』には悪いけど、この中に幸輝を入れようかと考えてます。


「よぉ、初めまして。俺の名前は宮永煌成みやながこうせいだ。よろしく頼むぜ」


暫くして『宮永』の声が聞こえてきた。
声の近さからしてまだドアの近辺にいる気がする。


「………はじめまして、くろすひなだよ。おにいさん、こえがかっこいいね」


続いて奥から日夏の声が聞こえてきたが、怖がっている風には聞こえなかった。
その事にまず安堵し、引き続きドアに張り付く。


「そうかい?そりゃ嬉しい誉め言葉だぜ」


「おにいちゃんたちのこえよりひくいね」


「そのだろう。なぁ、そっちに行っても良いか?日夏と話がしたいんだ」


「うん、いいよ」


良いなぁ、日夏。
オレも宮永に『話がしたいんだ』とか言われてみたい。
まぁ、オレの場合、そんなこと言われなくても話したいタイミングで話せるだろうから言う必要もないもんな。
そもそも話したいとも思われないだろうけど。
今回話しかけて来たのだって日夏の為だろうし。


「早速で悪いが、ちょいと俺の話を聞いちゃくれねぇか」



「おにいさんのおはなし?うん、ききたい!」


え、宮永の話?
これオレ聞いて良いのか?
聞いたら宗方に怒られる気がするんだけど。
それに宮永にも悪い気がするし。
そう思って、扉から離れようとしたとき、凛とした声が耳に届いてしまった。


「俺な、ある事件がきっかけで幼なじみの大雅以外の男が苦手になっちまったんだよ。その中でも特に苦手なのが日夏の兄貴のように女性に人気のある男」


それを聞いた瞬間、胸にナイフを突き刺された感覚に陥った。
どくどくと流れ出るそれと、ある筈のない痛みを感じる。
刺されたと感じる場所に手をやれば、溢れ出たものに触れた気がした。
耳鳴りまでし始め、背後の壁に背をつきそのままズルズルと座り込んだ。


オレみたいな女性に人気のある男?
峯岸みたいな男ってことか?
オレ峯岸より人気ないけど。
いや、そこ張り合う所じゃなくて、そうじゃなくて。
宮永にとってオレは特に苦手な男というわけだ。

だから、宗方はオレが宮永に関わることを警戒していたのか?
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