泣くなといい聞かせて

mahiro

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別れないか?

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よし、奴が戻ってきたら話をしよう。
そう思って正座をしながら奴を待っていたんだが、なかなか戻ってこない。
自分のスマホに表示されている時間を見てみると軽く1時間は経過しているではないか。
足も痺れてきたし、体勢を変えてからしばらく待っても来ない。
電話しているのか?
それともどっか行ったのか?
まさかさっきの女性のところに行ったんじゃないだろうな。
こんな悠長に待ってて良いものか、探しに行こうと立ち上がり部屋の鍵を持って出て行こうとすれば、そのタイミングで扉が開いた。


「あ?どっか行くの?」


「いや、なかなかお前が戻ってこないから探しに行こうかと思っていた所だ」


「あ、そう。悪いな長電話してた」


お前と長電話するような奴はアキくらいしか知らないが、アキと電話したにしては表情が柔らかくないな。
もしかして電話と言っているが本当は女性に会って来たんじゃないかと怪しみ奴に近付いて匂いを確かめるもこいつの匂いとお風呂にあったボディーソープの香りしかしない。
つまり、女性とは会っていなかったというわけだ。


「何、人の匂い嗅いだりして。浮気チェックでもされてるわけ?」


「いやな、風呂に行く際、お前の好きなタイプにドンピシャな女性が居てな。その者の所に行ったのではないかと思ってしまって」


「やっぱり浮気チェックじゃない。してないっつうの」


「みたいだな」
 

「みたい、じゃなくてそうなの」


全くと不貞腐れる奴に、俺はついに切り出した。


「北嶌。少し話があるのだが、いいか?」


「話?何の?」


「まぁまぁ、座って話そうじゃないか」


奴の背中を押して座椅子に座らせ、俺はその向かい側に腰掛け、奴の鋭い目をしっかりと見ながら言った。


「なぁ、北嶌。俺たち別れないか?」
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