泣くなといい聞かせて

mahiro

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奴の好きなタイプ

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早く行かねば怪しまれると思い、駆け足で奴のいる場所へ向かえば何故か女性に頭を下げられている奴の姿があった。
女性の隣には2歳か3歳の子供がおり、服を握り締めている姿が見えた。
これは子供が迷子になっていた所を奴が助けたって所か。
動物にはとことん嫌われるが子供には好かれる男だからな。
奴には兄弟はいないが何故か子供の面倒を見るのは得意であった。
何故なのかと問いかけたら何故か俺のことを見た後に盛大な溜め息をつかれたのだが、あれは一体何でだ。
それはいまだに分からず仕舞いだ。


「あの、どうかされました?」


通路の端から隠れるようにそれを見ていたら、若い女性が顔を覗いてきた。
見れば全体的に可愛らしい女性で、奴の好きそうなタイプだった。
ちなみに奴の好きそうなタイプとは、顔が小さくて髪が短く手足が細長くスタイルの良い子だ。
この子はどの項目もクリアしているではないか。
でもきっと、こんなに可愛ければ連れがいるに決まっているな。


「あ、いや、すまない。連れの同行を見守っていたんだが、不審な動きをして君に迷惑をかけてしまったようだな」


「いえいえ、そんな迷惑なんてかけられていないですよ。ただ、泣きそうな顔に見えたので、何か悲しいことでもあったのかと思いまして」



泣きそうな顔、をしていたのだろうか。
自分では全く分からなかったが。
頬に手をやっても濡れてはいないから、泣いてはいなさそうだ。
にしても駄目だな、こんな所で感傷に浸っては。


「心配して声をかけてくれたのだな。ありがとう、もう大丈夫だ」


そう言って微笑んでみせれば、女性の頬が染まったように見えたのだが、何故だと思った瞬間に首もとが締まって息苦しくなった。
何だいきなり。


「券を取りに行くだけでえらい時間かかってない?待ちくたびれたんですけど、このポンコツ」


不機嫌丸出しの奴の声と首に回された腕に力が込められて苦しい。


「北嶌、苦しい、離せ!このままじゃ窒息する!」


「それじゃあ、さっさとこっち来いよ。何十分待ってると思ってんの」 


そのままの体勢で風呂の方へと連れて行かれそうになり、そのやり取りを見守っていた女性に振り返りながら手を振ったら小さく振り返してきた。
あぁいう良い子そうな女性なら応援できそうだな、嫌だけど。
凄く嫌だけど、と思っていたら頭を空いている方の手で叩かれた。


「いきなり何だ?俺が何をした?!」


「はぁ、自覚がないってホント罪だよなぁ」


「自覚?何の自覚だ?分かるように言ってくれ」


奴は顔を背けたまま俺の問いには答えてくれず、そのまま温泉へと向かうことになった。
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