泣くなといい聞かせて

mahiro

文字の大きさ
上 下
8 / 17

チャンス到来!

しおりを挟む
部屋に辿り着くなり俺にチャンスが訪れた。
丁度部屋に入ったタイミングで奴の携帯が鳴り、ディスプレイを見た途端に何故か部屋の外に出て行ったのだ。
何故中でなく外に出て話す必要があるのか気になる所だし、俺に聞かせたくない内容なのかとか、女性からかかってきたんじゃないかと疑いたい気持ちもある。
だがそれよりも今の俺は、目の前に置かれた奴の鞄から目が離せなくなっていた。
しかも、その鞄に財布とこの部屋の鍵を鞄に仕舞っておくように、奴に頼まれたのだ。
そのおかげで正々堂々と鞄を開けられる権利を得た訳である。
このタイミングで奴の家の鍵をそっと入れてしまえば良いではないか。
よし、ではまず奴の鞄を開けよう。
それでもってどこに忍ばせるか、とファスナーを開けてみると何と中に何も入ってませんでした。
どこのファスナーを開けても全て空。


いや、え?
何だあいつ。
スマホと財布しか持ってないってことか?
ちなみに奴本人の家の鍵は財布にぶら下がっているから、こんな中がスカスカだとプラスアルファで入れた家の鍵なんてあったらすぐに気が付くな。
よって、入れるにしても今じゃない。
まだまだ時間はあるし、ここは大人しく言われた通り財布とこの部屋の鍵だけ入れておこう。


「お待たせ」


それから数分後、何食わぬ顔でやってきた奴は真っ直ぐに俺の横に置いてあった鞄を掴み、中をごそごそと漁りだした。
それには表情に出さなかったが内心驚いた。
あのまま入れていようものなら一瞬でバレていたということじゃないか。
危ない、入れなくて良かった。


「あった、ほらよ」


「何だ?」



財布を取り出したかと思えば、クーポン券のような紙を手渡され、そこには『入浴券』と書かれている。
裏面に説明書きで『入浴する際に必ずスタッフに提出ください』と書かれているじゃないか。
つまり、この券がないと入浴できないとそういう意味か。


「それお前の分ね」


「おぉ、ありがたく頂戴する」


「はいはい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話

雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。 樋口(27)サラリーマン。 神尾裕二(27)サラリーマン。 佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。 山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

俺はすでに振られているから

いちみやりょう
BL
▲花吐き病の設定をお借りしている上に変えている部分もあります▲ 「ごほっ、ごほっ、はぁ、はぁ」 「要、告白してみたら? 断られても玉砕したら諦められるかもしれないよ?」 会社の同期の杉田が心配そうに言ってきた。 俺の片思いと片思いの相手と病気を杉田だけが知っている。 以前会社で吐き気に耐えきれなくなって給湯室まで駆け込んで吐いた時に、心配で様子見にきてくれた杉田に花を吐くのを見られてしまったことがきっかけだった。ちなみに今も給湯室にいる。 「無理だ。断られても諦められなかった」 「え? 告白したの?」 「こほっ、ごほ、したよ。大学生の時にね」 「ダメだったんだ」 「悪いって言われたよ。でも俺は断られたのにもかかわらず諦めきれずに、こんな病気を発病してしまった」

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

処理中です...