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見せられない部屋
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結局家の前まで手を掴まれたまま来てしまった。
まぁ、良いさこの家もあの駅も暫くすれば使わなくなる駅さ。
それよりここでどう奴を外で待たせるかが重要だ。
「おい、北嶌(きたじま)。朝部屋を盛大に散らかしてきて見せられる状態じゃないから外で待っていてくれないか?」
「あ?そんなのいつもじゃん。何気にしての今更」
「た、しかに今更なんだが、その、何だ、その…」
どうする、どうしたら奴をここで待たせることが出来る。
考えろ、考えるんだ俺。
「あぁ、まさかあれか?あ」
「あーーー!っとそれ以上は言わせないぞ?!」
奴の口を両手で押さえながら扉に近付きいた。
今こいつ何言おうとしたんだ。
絶対ろくでもないことだろう。
だって、奴の顔笑ってるし。
「それこそ今更だけど。もしかして朝、それがあったから口数少なかったの?」
手を外され、にやにやとした奴の顔を睨み付けてやれば、笑われた。
何なんだこいつ。
「お前が睨んでも怖くないっての。ほら、外で待っててやるから早く行ってこい」
しっしっとやられ、俺は奴のことを見ながら出来るだけ部屋の中身が見えないように扉を開き素早く中へ忍び込み、鍵を閉めた。
奴の言うお泊まりセットとは俺の髪のセット用のワックスやらこだわりのある櫛のことだったりする。
でも、今回はそれらを使用する予定はないのだが、何も持たずに出るとそれもそれで怪しまれるだろうから、一応、持つだけ持つ。
他には特に持っていかずともどうせそのまま帰ってくるしいっか。
あとは扉を開けたとき、段ボールが見えないように扉を閉めれば完璧だ。
これで入ってきたように出れば済むだけ、と思って玄関に行く外から奴の話し声が聞こえてきた。
誰かと話してる?
でも、相手の声が聞こえてこないということは電話か?
でも、誰と?
いや、高校の頃の友人とはまだ付き合いがあるだろうし、大学も知り合いがいてよくつるむと言っていた。
もしかしたらそういう人たちかもしれん。
ここは気にしてない風に家を出よう。
そう思いながら家を出ると、やはり奴はこちらに背を向け誰かと電話で話していた。
俺のことに気付いていないようなので、そのまま扉を閉め鍵も閉める。
よし、これで準備完了だ。
「んじゃ、またアキちゃん」
親しみのある呼び方で呼ばれたその名は、こいつが今のこいつになるきっかけとなった人物で、高校の同級生である。
何かがあればすぐにアキちゃんアキちゃんと言うこいつに暫くヤキモチを妬いていたが、2人に友情以上の感情がないと分かっている今は何とも思わない。
「おう、やっときたか」
この憎たらしいほど幸せそうな顔を見ると今だに腹立つが。
この顔を見るたびに本当に友情だけなのかと問いただしたくなる気持ちは分かっていても沸き出てしまうのか仕方なかろう。
「何て顔しての。ほら行くぞ」
またもや手首を掴まれ、歩かされる。
こうして俺はこいつに振り回されてきたんだよな、今までも、これからも。
まぁ、良いさこの家もあの駅も暫くすれば使わなくなる駅さ。
それよりここでどう奴を外で待たせるかが重要だ。
「おい、北嶌(きたじま)。朝部屋を盛大に散らかしてきて見せられる状態じゃないから外で待っていてくれないか?」
「あ?そんなのいつもじゃん。何気にしての今更」
「た、しかに今更なんだが、その、何だ、その…」
どうする、どうしたら奴をここで待たせることが出来る。
考えろ、考えるんだ俺。
「あぁ、まさかあれか?あ」
「あーーー!っとそれ以上は言わせないぞ?!」
奴の口を両手で押さえながら扉に近付きいた。
今こいつ何言おうとしたんだ。
絶対ろくでもないことだろう。
だって、奴の顔笑ってるし。
「それこそ今更だけど。もしかして朝、それがあったから口数少なかったの?」
手を外され、にやにやとした奴の顔を睨み付けてやれば、笑われた。
何なんだこいつ。
「お前が睨んでも怖くないっての。ほら、外で待っててやるから早く行ってこい」
しっしっとやられ、俺は奴のことを見ながら出来るだけ部屋の中身が見えないように扉を開き素早く中へ忍び込み、鍵を閉めた。
奴の言うお泊まりセットとは俺の髪のセット用のワックスやらこだわりのある櫛のことだったりする。
でも、今回はそれらを使用する予定はないのだが、何も持たずに出るとそれもそれで怪しまれるだろうから、一応、持つだけ持つ。
他には特に持っていかずともどうせそのまま帰ってくるしいっか。
あとは扉を開けたとき、段ボールが見えないように扉を閉めれば完璧だ。
これで入ってきたように出れば済むだけ、と思って玄関に行く外から奴の話し声が聞こえてきた。
誰かと話してる?
でも、相手の声が聞こえてこないということは電話か?
でも、誰と?
いや、高校の頃の友人とはまだ付き合いがあるだろうし、大学も知り合いがいてよくつるむと言っていた。
もしかしたらそういう人たちかもしれん。
ここは気にしてない風に家を出よう。
そう思いながら家を出ると、やはり奴はこちらに背を向け誰かと電話で話していた。
俺のことに気付いていないようなので、そのまま扉を閉め鍵も閉める。
よし、これで準備完了だ。
「んじゃ、またアキちゃん」
親しみのある呼び方で呼ばれたその名は、こいつが今のこいつになるきっかけとなった人物で、高校の同級生である。
何かがあればすぐにアキちゃんアキちゃんと言うこいつに暫くヤキモチを妬いていたが、2人に友情以上の感情がないと分かっている今は何とも思わない。
「おう、やっときたか」
この憎たらしいほど幸せそうな顔を見ると今だに腹立つが。
この顔を見るたびに本当に友情だけなのかと問いただしたくなる気持ちは分かっていても沸き出てしまうのか仕方なかろう。
「何て顔しての。ほら行くぞ」
またもや手首を掴まれ、歩かされる。
こうして俺はこいつに振り回されてきたんだよな、今までも、これからも。
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