新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro

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部屋の中をウロウロと動き周り、手に持っていた端末を四方八方に向けていた。
恐らくあれで形跡が残っていないか調査しているのだろう。
その間、俺はその様子をじっと見ていることしか出来なかった。


1か月。
いやその前からか。
見張られていたなんて全く気付かなかった。
仕事と家の往復をしていたとはいえ、人と全く接さないことはない。
直接ではないにしろ、間接的にでも接していたのは確かなわけで。


「ルイ君」


「はい」


急に名前を呼ばれ、沈みきっていた思考から我に返れば真剣な眼差しをこちらに向けていたロジェと目があった。


「調査に夢中になってごめん。色々と説明不足だったな。本当は勤務先に返して今日は別れようと思っていたんだけど、あのままあの店にいたらアンリさんとローカルさんが危険な目に合う可能性があったから無理やり外に出すような形にしてしまった。ごめん」


「え、危険な目に合う可能性って、俺のせいでですよね」


「あのままルイ君だけを残していたらね。今ごろ外にいる奴が襲ってきていたんじゃないかな」


「そ、そんな」


俺のせいで散々お世話になっていたアンリやローカルに迷惑なんてかけたくない。
ただでさえ帰るのが遅くなって不安にさせてしまったのに。
怪我なんてさせてしまったら、気が狂いそうだ。


「大丈夫。イッポリートが帰ってきたようだからあの店も安全だ」


イッポリート?
聞きなれない名前だ。
でも、話の流れからしてアンリとローカルの息子さんか?


「イッポリートさんとどういうご関係で?」


アンリの息子は暫く放浪していたと聞いているが、その間に知り合ったのだろうか。


「まぁ、ちょっとな。詳しくは話せないが、あいつに店のことも2人のことも任せて良いのは確かだ。保証する。ルイ君は身体をもとに戻すことだけに専念すれば良いよ。身の安全確保や原因究明、その他それに関わる全てを俺たちに任せてくれていい」
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