新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro

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ロジェと事務所を出て勤務先へ向かう間、ロジェは一言も話さなかった。
何故話さなかったのか分からなかったが、事務所を出てから態度や雰囲気が変わったわけでも、機嫌を損ねているわけではなさそうだった。
きっと、何かしらの理由はあるのだろうなと思いながら、ただロジェの後ろを歩いた。
それからしばらくしてアンリとローカルのいる勤務先へ戻ると、泣きそうなアンリと怒り狂った表情のローカルがいた。


「ルイ?!無事だったのかい!?」


ローカルは手に持っていた花瓶をテーブルに投げ捨て、それを慌ててアンリはキャッチしていた。


「うん。遅くなってごめん」


慌てて駆け寄って来たローカルは俺の顔や身体に怪我がないか確認した後、俺の両肩を掴み抱き締められた。


「良かった……また別の事件に巻き込まれたんじゃないかと思ったぁ。憲兵に連絡しても全く取り合ってくれないし」


良かった良かった、と繰り返すローカルに調査に応じない憲兵にまで連絡してくれたのかと、申し訳なさを感じた。
こんなことならロジェの事務所へ行ったときにでも連絡をいれておくべきだったか。
いや、電話だと姿が見えないから脅されて言わされていると勘違いされていたか。


「ご心配おかけしてすみません。ルイ君がこんなに遅くなってしまったのは我々の調査にお付き合いいただいたからなんです」


そこへさっきまで無言を貫いていたロジェが口を開き、声で存在に気づいたらしいローカルはロジェを見て驚いていた。
アンリも俺ばかりに集中していて気付かなかったらしい。


「申し遅れました。私、ロジェ探偵事務所のロジェ・リシャーと申します」


ロジェはポケットから名刺を取り出し、近くにいたローカルに手渡した。
そこには名前の横に『所長』と書かれていて、ローカルとそれを覗いて見ていたアンリが驚いていた。
2人とも『まだ若いのに所長?!』と思ってそうだな。


「本日、私の事務所で働いている調査員のひとりが困り果てていたルイ君を見つけ、声をかけました。そして、事情を聞き、調査を進めていた所、長時間お時間をいただく形となってしまいました。本来、調査前にご連絡すべきところ、連絡を怠り、申し訳ございませんでした」
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