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もし本当にシュア自身が騎士団を脱退したとしても、副団長であった彼をシャルル陛下が簡単に手放すはずがない。
手放したと思わせて尾行させているかもしれない。
「お兄様、シャルル陛下は何と?」
顔面蒼白になりながら問いかけてきたリリに真実を伝えるべきか悩んだが、まだ影のことについては触れないことにした。
要らぬ心配はかけない方が良いだろうし。
「………シャルル陛下は薬を口実に私を城に、いや、カナア大国に連れて来るために私を呼んだそうだ。あの薬もリーシャがこの国に来たのも全てあの男の策だった」
「そんな……じゃあ、私たちがここに逃げて来たのもご存じだったということですか?」
「そういうことだろうな」
シャルル陛下からすると敢えて泳がせていたって所だろう。
何故この時期なのか、と考えたが、以前の私はこの時期にフレイヤに会うため学校に通い始めており、既に隣国から城に誘われていた時期だった。
あのときはラッキーくらいにしか思っていたかったけれど、何故呼び寄せる必要があったのかいまだに謎だ。
「ルナ兄ちゃん、僕に出来ることある?」
必死にリリを抱きしめるロンと私たちの言動を無言のまま様子を見つめるシュアの様子を一瞥する。
ロンからすると師匠として慕っていた人物をいきなり疑え、敵視しろ、なんて酷なことか。
それも本人目の前にしてそれを伝えるのもいかがなものか。
「ロン君、これからはひとりで行動しないように気をつけて。知らない大人から何か言われたりしてもついて行かないで。たとえ、リリのため、とか私のためとか言われても絶対について行かないで。それはロン君を捕まえるための罠だから。リリも同じ。絶対にひとりで行動してはダメ。店もひとりのときは絶対に店を閉じて。常連のお客様が来ても絶対に開けちゃダメだからね」
手放したと思わせて尾行させているかもしれない。
「お兄様、シャルル陛下は何と?」
顔面蒼白になりながら問いかけてきたリリに真実を伝えるべきか悩んだが、まだ影のことについては触れないことにした。
要らぬ心配はかけない方が良いだろうし。
「………シャルル陛下は薬を口実に私を城に、いや、カナア大国に連れて来るために私を呼んだそうだ。あの薬もリーシャがこの国に来たのも全てあの男の策だった」
「そんな……じゃあ、私たちがここに逃げて来たのもご存じだったということですか?」
「そういうことだろうな」
シャルル陛下からすると敢えて泳がせていたって所だろう。
何故この時期なのか、と考えたが、以前の私はこの時期にフレイヤに会うため学校に通い始めており、既に隣国から城に誘われていた時期だった。
あのときはラッキーくらいにしか思っていたかったけれど、何故呼び寄せる必要があったのかいまだに謎だ。
「ルナ兄ちゃん、僕に出来ることある?」
必死にリリを抱きしめるロンと私たちの言動を無言のまま様子を見つめるシュアの様子を一瞥する。
ロンからすると師匠として慕っていた人物をいきなり疑え、敵視しろ、なんて酷なことか。
それも本人目の前にしてそれを伝えるのもいかがなものか。
「ロン君、これからはひとりで行動しないように気をつけて。知らない大人から何か言われたりしてもついて行かないで。たとえ、リリのため、とか私のためとか言われても絶対について行かないで。それはロン君を捕まえるための罠だから。リリも同じ。絶対にひとりで行動してはダメ。店もひとりのときは絶対に店を閉じて。常連のお客様が来ても絶対に開けちゃダメだからね」
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