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あの後、皇帝陛下の部下が私を迎えに来たのでリーシャとは別れたが、ハッキリいってバレたかどうか分からなかった。
以前のリーシャなら何を考えてるか読めていたものの、今回の彼女は読めない。
まぁ、前回だって正しく読めていたかなんて分からないし、深く考えるのはやめよう。
以前は何度も謁見の間に呼ばれ注意を受けていたから、案内がなくとも真っ直ぐ行ける。
だが、ここで訪れたことのないはずの平民であるルナが建物内を迷いなく歩くのはおかしいのでここは大人しくついて行くのが賢明だろう。
それにしてもここは私がいた頃と何一つ変わっていない。
建物も部屋の作りも何もかも。
通りすぎる人たちも見覚えある人物ばかりで、まるで過去に戻ってきたのではと錯覚しそうだ。
「こちらでお待ちください」
案内に黙ってついていき、謁見の間に辿り着けば室内には誰もいなかった。
どうやら私の方が早かったみたいだ。
「来たか」
久しく聞いた地を這うような声が聞こえ、頭を深々と下げた。
この声で何度お叱りの言葉を受けたことか。
まぁ、当時は叱られて当然のことばかりしてきたから自業自得だったのだけれど。
「面を上げよ」
言われるがまま面を上げ、視線を上に上げれば記憶にあるものと変わらないシャルル殿下の姿があった。
この人が権力を得るために私たちを追い出した張本人だ。
「お初にお目にかかります。ルナと申します」
「遠方からわざわざすまなかったな」
心にも思っていないことを。
平民に対してからなのか、私をあのルナだと分かっているからなのか名すら名乗らないことから、自分から呼んでおいて歓迎はしていないようだ。
そんなことなら呼ばなければ良いのに、と思ってしまう。
「早速だが、本題に入ろう」
以前のリーシャなら何を考えてるか読めていたものの、今回の彼女は読めない。
まぁ、前回だって正しく読めていたかなんて分からないし、深く考えるのはやめよう。
以前は何度も謁見の間に呼ばれ注意を受けていたから、案内がなくとも真っ直ぐ行ける。
だが、ここで訪れたことのないはずの平民であるルナが建物内を迷いなく歩くのはおかしいのでここは大人しくついて行くのが賢明だろう。
それにしてもここは私がいた頃と何一つ変わっていない。
建物も部屋の作りも何もかも。
通りすぎる人たちも見覚えある人物ばかりで、まるで過去に戻ってきたのではと錯覚しそうだ。
「こちらでお待ちください」
案内に黙ってついていき、謁見の間に辿り着けば室内には誰もいなかった。
どうやら私の方が早かったみたいだ。
「来たか」
久しく聞いた地を這うような声が聞こえ、頭を深々と下げた。
この声で何度お叱りの言葉を受けたことか。
まぁ、当時は叱られて当然のことばかりしてきたから自業自得だったのだけれど。
「面を上げよ」
言われるがまま面を上げ、視線を上に上げれば記憶にあるものと変わらないシャルル殿下の姿があった。
この人が権力を得るために私たちを追い出した張本人だ。
「お初にお目にかかります。ルナと申します」
「遠方からわざわざすまなかったな」
心にも思っていないことを。
平民に対してからなのか、私をあのルナだと分かっているからなのか名すら名乗らないことから、自分から呼んでおいて歓迎はしていないようだ。
そんなことなら呼ばなければ良いのに、と思ってしまう。
「早速だが、本題に入ろう」
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