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目が…やられます
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「彼女と会ったのは中学二年の頃で、俺もまだ父さんのことよく分かっていなかったから、家に帰るのも嫌だったし話しもしたくなかった頃だった。何となく外を出歩いていたときに向こうから声をかけてきて、最初は警戒しながら接してたんだけど、彼女があまりにも俺のことだけを見て接してくれる姿を見ていたら、いつの間にか彼女の隣で過ごすのが気分的に楽になって、そのまま家に居着いた」
当時の峯岸君には慶二さんの行動は分からないし、自分の家に帰っても気が休まらなかったんだろうな。
そんなときに出会ったのが彼女さんで、峯岸君にとって居心地の良い場所をくれた恩人のような存在だったのかな。
「父さんの行動だとか、父さんのことを知るきっかけとなったのは高校受験のときでまともに話したのは中学三年になってからだったな。最初は未成年が血の繋がりの女性の家に転がり込んだことに対して怒られるのかと思っていたのに、どうやら父さんも母さんに対して同じことをしていたから何も言えないって言われた」
親子揃って同じことしてたなんて、流石だなぁ。
僕とお母さんが似てるところって何処だろう。
寝相が悪いところくらいかな。
「父さんの当時の話と、それからの話を聞いて、今まで楽だと思っていた彼女の隣に違和感を感じ始めたんだよ。帰りたくないと思っていた家も特に嫌だと思わなくなったし、父さんが帰ってくる頻度も連絡してくる頻度もだいぶ増えてきて、ひとりだと思うことが減ってきたってのもある。あの頃はあんなにも俺だけを見てくれる存在に確かに居心地の良さを感じていたし、彼女のことを好きだとも思っていたんだと思う。だけど、その好きっていうのが恋だったのかというと分からない。もしかしたら俺は彼女にお母さんから与えられるような安心感だとかそういったものを求めていたのかもしれないって思える。今の俺は、いや、当時の俺もからだと思うけど、彼女の気持ちと俺の気持ちはイコールじゃないって思い始めてる」
「つまり、峯岸君は彼女さんに罪悪感を感じ始めてるってこと?」
だからあまり反応が良くなかったし、話しにくそうにしてたのかな。
昨日も向こうに行けてないし、いや、今は行きにくいのかな。
「そうだ。気付いてしまってからはもう前の気持ちには戻せなくて、俺はもう彼女とこれを機にやり直そうと思ってる」
「やり直すって、一体…」
何処から?
彼氏彼女の関係をってことかな。
峯岸君が彼女さんと同じ気持ちになれるように頑張るってこと?
「初めから可笑しな関係だったんだ。本来あるべきだった姿に戻そうと思ってる」
そう言いきった峯岸君の表情は真剣そのもので、慶二さんが僕に同居しようって伝えてきたときと重なって見えたような気がした。
本来あるべき姿ってやっぱり、峯岸君はただの高校生になるってことだよね。
彼女の家に住み込む高校生じゃなくて、自宅から学校に通う高校生って。
「……僕ね、峯岸君のような経験をしてないから憶測でしかものが言えないんだけどね、峯岸君にとって彼女さんが必要な存在だったのは間違いないと思う。今の峯岸君の気持ちも間違いないと思うよ。彼女さんとこれからお話しして二人が納得行く答えはなかなか最初は出ないかもしれないけど、峯岸君がこうしていきたい!って、意思を伝え続ければいつか峯岸君の思いが彼女さんに伝わるかもしれないね。僕、応援するよ。峯岸君はこれからやり直せるように」
そう僕が答えたらそれはもう目がやられそうになるほど、綺麗な顔で。
「ありがとう、杉本」
と言われました。
もう鼻血が出るかと思いました。
少女漫画の主人公なら今頃鼻血出して倒れてるよ。
当時の峯岸君には慶二さんの行動は分からないし、自分の家に帰っても気が休まらなかったんだろうな。
そんなときに出会ったのが彼女さんで、峯岸君にとって居心地の良い場所をくれた恩人のような存在だったのかな。
「父さんの行動だとか、父さんのことを知るきっかけとなったのは高校受験のときでまともに話したのは中学三年になってからだったな。最初は未成年が血の繋がりの女性の家に転がり込んだことに対して怒られるのかと思っていたのに、どうやら父さんも母さんに対して同じことをしていたから何も言えないって言われた」
親子揃って同じことしてたなんて、流石だなぁ。
僕とお母さんが似てるところって何処だろう。
寝相が悪いところくらいかな。
「父さんの当時の話と、それからの話を聞いて、今まで楽だと思っていた彼女の隣に違和感を感じ始めたんだよ。帰りたくないと思っていた家も特に嫌だと思わなくなったし、父さんが帰ってくる頻度も連絡してくる頻度もだいぶ増えてきて、ひとりだと思うことが減ってきたってのもある。あの頃はあんなにも俺だけを見てくれる存在に確かに居心地の良さを感じていたし、彼女のことを好きだとも思っていたんだと思う。だけど、その好きっていうのが恋だったのかというと分からない。もしかしたら俺は彼女にお母さんから与えられるような安心感だとかそういったものを求めていたのかもしれないって思える。今の俺は、いや、当時の俺もからだと思うけど、彼女の気持ちと俺の気持ちはイコールじゃないって思い始めてる」
「つまり、峯岸君は彼女さんに罪悪感を感じ始めてるってこと?」
だからあまり反応が良くなかったし、話しにくそうにしてたのかな。
昨日も向こうに行けてないし、いや、今は行きにくいのかな。
「そうだ。気付いてしまってからはもう前の気持ちには戻せなくて、俺はもう彼女とこれを機にやり直そうと思ってる」
「やり直すって、一体…」
何処から?
彼氏彼女の関係をってことかな。
峯岸君が彼女さんと同じ気持ちになれるように頑張るってこと?
「初めから可笑しな関係だったんだ。本来あるべきだった姿に戻そうと思ってる」
そう言いきった峯岸君の表情は真剣そのもので、慶二さんが僕に同居しようって伝えてきたときと重なって見えたような気がした。
本来あるべき姿ってやっぱり、峯岸君はただの高校生になるってことだよね。
彼女の家に住み込む高校生じゃなくて、自宅から学校に通う高校生って。
「……僕ね、峯岸君のような経験をしてないから憶測でしかものが言えないんだけどね、峯岸君にとって彼女さんが必要な存在だったのは間違いないと思う。今の峯岸君の気持ちも間違いないと思うよ。彼女さんとこれからお話しして二人が納得行く答えはなかなか最初は出ないかもしれないけど、峯岸君がこうしていきたい!って、意思を伝え続ければいつか峯岸君の思いが彼女さんに伝わるかもしれないね。僕、応援するよ。峯岸君はこれからやり直せるように」
そう僕が答えたらそれはもう目がやられそうになるほど、綺麗な顔で。
「ありがとう、杉本」
と言われました。
もう鼻血が出るかと思いました。
少女漫画の主人公なら今頃鼻血出して倒れてるよ。
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