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「嘘……でしょう?」
この国に数名しかいない特級で、この国で一番の魔法使いとまで言われていた先生が亡くなった?
どんな任務をこなしても傷ひとつ負わずに帰ってきていた人だったのに。
「残念ながら本当です。城を襲った魔物を封印されたティファニー様と共に力尽き、そのまま…」
エクベルトの話を信じたくはないが、こんな笑えない冗談を言うような男ではないため、事実なのだろう。
「それじゃあ………その血は先生の血なんだね」
俺がそう言うと、エクベルトは何かを言おうと口を開いた。
同時に村の中を走っていたひとりの魔法使いが叫んだ。
「ノラン一族が住まう一体が全壊!生存者がいるか至急確認しろ!」
ノラン一族?
確かイヴの一族がノラン一族だったはず。
まさか、イヴの身にも何かあったのだろうか。
「え、先輩!何処に行くんですか?!」
走り去った魔法使いの後を追いかけようとした俺の肩をエクベルトが掴み、俺は顔だけそちらに向けた。
「今の聞こえたでしょ。イヴのもとに行かないと」
例え仲があまりよくない相手でも、こんな緊急事態でそんなことは言ってられない。
有能な能力を持ってしても、命を落とした人がいるのだ。
能力の開花がないイヴなど一瞬でやられていても可笑しくない。
先生の命は助けられなかったけれど、もしかしたらイヴの命は助けられるかもしれない。
そう思っていた、なのに。
「行っても……イヴさんはいません!」
エクベルトは顔を歪ませながら、聞きたくもないことを言った。
「先輩、よく聞いてください。ヨーゼフ君についているこの血はイヴさんのものです。イヴさんは………ヨーゼフ君を庇って亡くなっていたのです」
この国に数名しかいない特級で、この国で一番の魔法使いとまで言われていた先生が亡くなった?
どんな任務をこなしても傷ひとつ負わずに帰ってきていた人だったのに。
「残念ながら本当です。城を襲った魔物を封印されたティファニー様と共に力尽き、そのまま…」
エクベルトの話を信じたくはないが、こんな笑えない冗談を言うような男ではないため、事実なのだろう。
「それじゃあ………その血は先生の血なんだね」
俺がそう言うと、エクベルトは何かを言おうと口を開いた。
同時に村の中を走っていたひとりの魔法使いが叫んだ。
「ノラン一族が住まう一体が全壊!生存者がいるか至急確認しろ!」
ノラン一族?
確かイヴの一族がノラン一族だったはず。
まさか、イヴの身にも何かあったのだろうか。
「え、先輩!何処に行くんですか?!」
走り去った魔法使いの後を追いかけようとした俺の肩をエクベルトが掴み、俺は顔だけそちらに向けた。
「今の聞こえたでしょ。イヴのもとに行かないと」
例え仲があまりよくない相手でも、こんな緊急事態でそんなことは言ってられない。
有能な能力を持ってしても、命を落とした人がいるのだ。
能力の開花がないイヴなど一瞬でやられていても可笑しくない。
先生の命は助けられなかったけれど、もしかしたらイヴの命は助けられるかもしれない。
そう思っていた、なのに。
「行っても……イヴさんはいません!」
エクベルトは顔を歪ませながら、聞きたくもないことを言った。
「先輩、よく聞いてください。ヨーゼフ君についているこの血はイヴさんのものです。イヴさんは………ヨーゼフ君を庇って亡くなっていたのです」
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