カランコエの咲く所で

mahiro

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ばあちゃんには愛されていたさ。
出来損ないの孫として。
些細なことでも誉めてくれていたし、手を繋いで町を歩いてくれたこともあった。  


「おーい、準備できた?」


過去を振り返りかけたとき、いきなり俺の目の前にゲルハルトが現れた。
ゲルハルトには扉から入るという概念はないのだろうか。


「出来てる」


ムスっとした表情でそう返せば、疲れた表情をしていたゲルハルトは首を傾け、視線をまとめた荷物に向けた。


「これだけ?」


「そうだ」


段ボールと鞄に収まる荷物に、ゲルハルトは眉を潜めたかと思えば、あっという間にそれらは何処かに消えた。


「え」


「さてと、先に荷物は送れたし俺たちも移動しようか」


「ちょ」


俺が口を挟む間も無く、ゲルハルトに腕を掴まれそのままワープした。
ワープした先には、俺の知るゲルハルトの家ではなく見たことのないアパートの一室のようだ。
玄関には俺の荷物が置かれており、鞄をジョゼが鼻で押して部屋の中に入れている所だった。


「さぁて、今後の話とか話さなきゃいけないことが沢山あるんだけど、とりあえずご飯と風呂だよね」  


風呂風呂、と言いながら部屋の奥に消えていくゲルハルトの姿を視線で追った後にジョゼへと向かい鞄を持ち上げた。


「ありがとう、イヴ。持ち上げられなかったから助かったよ。そういえば、昨日は野宿だったよね?ゆっくりお風呂に浸かって身体を休めてね」


「ありがとう、ジョゼ」
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