カランコエの咲く所で

mahiro

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ヨーゼフがアカデミーを卒業し、下級となってから約半年が経過していた。
その間、俺とヨーゼフはたまにしか顔を合わせることがなかったように思う。
ヨーゼフは慣れない任務に追われていたようだし、俺は俺で能力を目覚めさせることで必死だった。
その間に怪しい行動は見られなかったと思うし、ゲルハルトに言われても現実味のない話にしか聞こえなかったし、ゲルハルトの方が偽者なのではと思っていた。
今も実は彼らが偽者だということが信じられない。


「黙りかな?言わないとなると、無理やり吐かせるしかないんだけど?」


警戒心を強める彼らと身体の周りにバチバチと音を立てながら火花を散らし始めたゲルハルトを俺はただ見ることしか出来ない。
これも俺が作り出した世界だとか、実はゲルハルトが作り出した世界だとか言われても俺には正しい判断が出来ない。
ゲルハルトの格好をした別人だとしても俺には分からない。
成り行きを見守るしか、今の俺には出来ない、そんな現状にも腹が立つ。
何か俺には出来ないのか?
俺にしか出来ないことってないのか?
混乱している頭の中で、いくら考えても答えが出る筈もなく、結局俺は彼らを見守るしか出来そうもなく唇を強く噛み締めた。


「イヴ君が何かしら関係しているのか、それとも能力についての研究か、本物のヨーゼフを探しているのか、はたまた別の理由か。思い当たるのはこれくらいなんだけど、どうだろう?」


さっきほどまで天気が良かったのに、突然雲が増え今にも雨が降りそうな空模様になり辺りが暗くなってきた。
ゴロゴロと雷の音までし始め、ぽつりと頬に雨が当たった。


「全て、とお答えしましょうか」


観念したようにエクベルトの格好をした人物がそう答えると、その横にいたヨーゼフがエクベルトの服を掴み、何やら小声で呟き始めた。


「ふぅん。なるほどね」


目を細めながら二人を見ていたゲルハルトは、口角を少し上げた。
その次の瞬間、目の前にいた二人の両脇に真っ黒のマントを羽織った人たちが突然表れ二人を拘束した。
首もとには見慣れる輪のようなものを嵌められ、先程まで何かを呟いていたヨーゼフの口元にはテープのようなものが張られていた。


「詳しいことは村に戻ってから聞こうかな。天気も悪くなってきたし。イヴ君も濡れる前に帰ろうか」


俺の方など見ずに、ゲルハルトはそう言うと俺の肩に手を置きワープをした。
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