離したくない、離して欲しくない

mahiro

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その16

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贅沢な生活を送ること約1週間。
先輩との生活は快適すぎて俺は楽で良いけど、先輩がどう思っているのか気になる所だ。
そういえば、先輩のニュースに関してだが、先輩の事務所は全否定しており、相手方の女優さんはノーコメントを貫いているらしい。
その情報は全て社内の女の子たちの話から得たもので、先輩からは何一つ聞いていない。
果たして聞いて良いものなのかどうかも分からず、今日も家に帰っては仕事をして床で寝て朝を迎えるのだと思っていたのだが。


「明日の夕食は外だから食べてくるなよ」


夕食を食べていたときに急にそんなことを言われ、何故だと警戒していれば、鼻で笑われた。
ご飯を作るのが大変になったとか、食料品が切れたとかそういうことなのかと思って尋ねようとするも、タイミングが掴めないまま翌日を迎えた。
そして、何時ものごとくヘロヘロになりながら帰ればその状態のまま先輩にとある小さな居酒屋に連れていかれた。
その店の扉には、本日貸し切りという札が下がっており、その扉を潜り抜ければそこには。


「え?!望月先輩にふなっち?!」


高校の頃の友人と望月先輩が店のカウンターに座っていた。
まさか再会出来ると思っていなかったので凄く嬉しい。
この間の飲み会だって本当は行けることなら行きたかったのだ。


「よう、笠原」


「久しぶりだね、笠原君」


「久しぶりっすね、元気でしたか?」


さっきまで感じていた仕事の疲れなどぶっ飛ばし、望月先輩の隣の席に座れば、その隣に先輩は大人しく座っていた。


「俺も船守ふなもりは変わらねぇが、お前は変わったな。何だこの目の下の隈と痩せ細った身体は」


無理やり顔を掴まれて目の下を親指でごしごしと下から上に擦られた。
昔から強引な所が多かったが、今も健在だ。


「痛いっす、望月先輩」


「痛くしてんだよ。その隣の野郎は有名になったからって調子乗ってチャラチャラしてすっぱ抜かれてるしよ」


「チャラチャラしてませーん。俺は真面目に仕事していただけです」


うりゃうりゃ、と両手で人の顔を潰そうとする望月先輩の手を外そうと頑張っている横で先輩は注文を済ませ、ビールを片手に飲み始めているのが見えた。
何気に俺の斜め前にもビールのジョッキが置かれているあたり、一緒に頼んでくれたようだ。


「嘘つけ、真面目にやってたら抜かれるわけねぇだろ」


「ホントですー。それにあの女優と一度も共演したこともないし、仕事でもプライベートでも会ったことないんだよ。連絡先だって知らねーし、俺」


「はぁ?そんなんでニュースになったってか?」


「そ。しかも、俺が笠原と再会した日時に俺はその子と密会していたことになってるから余計に意味が分からねぇ」


「抱き合ってたってのも、嘘だってか?」


「嘘嘘、会ってないのに抱き合えるわけないじゃん」


ポンポンと明るい空気のまま、あのニュースのことを聞ける望月先輩って凄い。
俺なんて1週間も先輩と過ごしてきて1度もこの話が出来なかったのに。
やっぱり望月先輩にも敵わないな。
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