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記憶
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前から私を知っていた…
フリオール様が来てから、私は一つ気になる様になった事がある。
それは、元々のアンジェリーナの記憶。
たぶん彼女が生きてきた約16年のすべての記憶を私が受け取る事は出来ていない。
それはあまりにも大量なデータだし、普通の人間だって要らないと思った記憶は忘れていくだろう。
アンジェリーナが意識的に覚えていた事は大体受け継いだ。
しかし、彼女自身が忘れ去ってしまった記憶や元々意識していなかったものは私に教える事は出来ないのだろう。
だから、特に幼い頃の記憶や、王妃教育を受けていた頃の何気ない記憶は凄く少ない。
王妃教育の頃はつい最近なのになぜ少ないか?
それはあまりにも膨大な覚える事、やらなければいけない事を強要され、それ以外の記憶が全て曖昧なのだ。
王妃教育が一番忙しかった13才から15才の間は特に顕著だった。
この3年間は家族との思い出、家での記憶も殆んど覚えていない。
たぶんアンジェリーナが普段の生活は淡々とこなすだけだったのだろう。
その分、王妃教育の先生達の顔と叩き込まれた礼儀作法、祭礼、式典の作法は強く印象に残っていた。
そして、感情として辛い苦しい逃げ出したいと思う気持ちと使命感、責任感で頑張らなければと思う気持ちがいつも戦っていた。
ホッとする事も辛い気持ちを吐き出す事も出来ず、耐える日々だった。
そして、一番認めて欲しい労って欲しい相手は自分を避けているのだ。
心の中は絶望感と焦燥感に侵食されていく。
その思いは痛い程記憶に残っていた。
そんな時期だったから、もしその頃他国からの賓客と王宮ですれ違っていたり、少し言葉を交わしたとしても日々の生活に沈んで忘れ去ってしまったのかもしれない。
「数年前です。フリオール様と10日ほどこの国に滞在致しました。
あなたは王妃教育の為、毎日王宮に通っていらっしゃいました。
その様子を何度かお見かけ致しました。
一、二度ご挨拶もしたと記憶しています」
「そうでしたか…」
やはり一番記憶が曖昧な頃…
あれ?
「あの、フリオール様もご一緒だったのですか?」
「ええ、そうです」
「もしかして、フリオール様とも私はご挨拶や会話をしたとか?」
「ええ、あなたに話し掛けていたのはフリオ様です」
なんだろう… 違和感。
フリオール様が来てから、私は一つ気になる様になった事がある。
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たぶん彼女が生きてきた約16年のすべての記憶を私が受け取る事は出来ていない。
それはあまりにも大量なデータだし、普通の人間だって要らないと思った記憶は忘れていくだろう。
アンジェリーナが意識的に覚えていた事は大体受け継いだ。
しかし、彼女自身が忘れ去ってしまった記憶や元々意識していなかったものは私に教える事は出来ないのだろう。
だから、特に幼い頃の記憶や、王妃教育を受けていた頃の何気ない記憶は凄く少ない。
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それはあまりにも膨大な覚える事、やらなければいけない事を強要され、それ以外の記憶が全て曖昧なのだ。
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たぶんアンジェリーナが普段の生活は淡々とこなすだけだったのだろう。
その分、王妃教育の先生達の顔と叩き込まれた礼儀作法、祭礼、式典の作法は強く印象に残っていた。
そして、感情として辛い苦しい逃げ出したいと思う気持ちと使命感、責任感で頑張らなければと思う気持ちがいつも戦っていた。
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そして、一番認めて欲しい労って欲しい相手は自分を避けているのだ。
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あれ?
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「ええ、そうです」
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「ええ、あなたに話し掛けていたのはフリオ様です」
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