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予想外

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何か変だ。
どうしてこうなったのかしら?

私は今庭園の隅で頭を抱えたい気分になっていた。

フリオール殿下が、アンヌリーブ様に必要以上に近付かない様に、ジュリアス様やセルビ様に協力を仰ぎ、私もアンヌから目を離さないようにしてから数日経った。

学校で私が知る限りアンヌにフリオール殿下が話しかけたり、気に掛ける素振りは一切なかった。

それはとても喜ばしい事だ。
私が最も避けたいと思っていた三角関係にはなる事はないからだ。

それは良かった、良かったんだけどなぜフリオール殿下は私が1人になると現れるの?

放課後アンヌはお城で公務の手伝いがあると早々に帰った。
私は部活に顔を出して庭園の外れの花壇を手入れしようとやって来た所だった。

一緒に来たエミリーが忘れ物を取りに戻った所へフリオール殿下が現れたのだ。

昨日は図書室に本を返しに行った所で。
一昨日は職員室を出た所で。
どちらも私が1人でいる時ばかり彼が現れて声を掛けてくる。

なぜ? 私のところへ?
彼はたまたまだって言うけど、3日続けてはないだろう。

「聞いてるの?アンジェリーナ嬢」

「は、はい」

「アンジェリーナ嬢は僕と会うと、いつもそうやって堅苦しい感じだよね。
他の令嬢達と一緒の時はとても柔らかな雰囲気で楽しそうなのにさ。
僕とももっと気楽に接してよ」

僕と気楽にって、そんなこと無理でしょう。
こっちは避けるべき相手だと思っているのに、それにいくらクラスメートでも婚約者以外の男性とそうそう二人っきりになる訳にはいかない。

アンヌじゃなくたって、噂になるような事は私だって避けたいもの。

「申し訳ありませんが、いくらクラスメートでも男性と女性の友達では同じ様には無理ですわ」
私は目を伏せながら困ったと言うように答える。

「うーん、やっぱり駄目か。
ごめんね。困らせるつもりはなかったんだ。
でも、教室では話くらいさせてね」

そう言って手を振りながら言ってしまった。

後ろからエミリーが戻って来ていた。
彼はそれを察して行ってしまったようだ。

「あれは、フリオール殿下よね?」
エミリーがフリオール殿下の後ろ姿を見ながら言う。

「ええ、エミリーが戻って来てくれて助かったわ。
あの方私が1人でいると、何処からか現れるのよね」

「それって…」
とエミリーが何か言い掛けます。

え? 嫌な予感しかしないわ。
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