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思い出の場所
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王都の南側 人工の森を中心に庭園と草原や池などを配している。
王都最大の公園が王立国営公園だ。
ここの庭園が私達の出会いの場所でもあった。
まだヴォルフ様が学校で騎士の訓練を受けていた頃。
私はまだ11才。
その頃の思い出に想いを巡らせながら、今またこの庭園で2人でいられるなんて。
「懐かしいですね。あの時クレマチスの花がとてもキレイで一緒に来た侍女や護衛をおいてあちこち歩き回ってしまって、気が付いたら周りに誰もいなくて。
不安になって侍女の名前を呼んで駆け出したら、転んでしまったのです」
「あの時私は隣の草原エリアで騎士の訓練をしていた。
仲間の1人が片思いの相手に花を持って帰ると言い出して、彼に付き合わされて庭園によったんだ」
私達はしっかり手を繋いで庭園を歩いていた。
「あの時、仲間の1人が猫が泣いているって言ったんだ。
他の奴が猫なんていないだろって言っていたら、確かに泣き声が聞こえた。
でも、猫ではなく子供の泣き声だって、皆で探し始めたんだ」
「転んだ後、足を捻ってしまった様で立てなくなって、どうしていいか分からず泣いていたんです。
そしたら大丈夫かいって聞こえて
顔を上げたらヴォルフ様が」
そうだ、とても優しい声で声を掛けてくれた。
しゃがんで目線を合わせて、微笑んでくれたから、とても安心出来たんだ。
「仲間が皆で囲んだら怖がられるから、お前が行けって言われたんだ」
「あの時はお互いこんな未来は想像もしていませんでしたよね」
私は殿下と合わないと悩み出す少し前の事だった。
あの時のヴォルフ様がまるでお姫様を助けに来てくれた王子様の様に感じてドキドキした記憶が流れてくる。
「きっと、こうなる為の布石だったんだよ。
私達は運命の出会いをここで果たしたんだ」
ヴォルフ様がそんな事言ってくれるなんて、ちょっと驚いた。
でも、嬉しい。
「本当にそうかもしれませんね。
私達の赤い糸はここで繋がったのですね」
これから、長い時間を一緒に歩んで行く内に、ケンカもあるかもしれないし、また困難な事に巻き込まれる事だってあるかもしれない、そんな時には今日の事を思い出そう。
2人の関係を見失いそうになったら、またここへ来よう。
私達の大切な思い出の場所に。
王都最大の公園が王立国営公園だ。
ここの庭園が私達の出会いの場所でもあった。
まだヴォルフ様が学校で騎士の訓練を受けていた頃。
私はまだ11才。
その頃の思い出に想いを巡らせながら、今またこの庭園で2人でいられるなんて。
「懐かしいですね。あの時クレマチスの花がとてもキレイで一緒に来た侍女や護衛をおいてあちこち歩き回ってしまって、気が付いたら周りに誰もいなくて。
不安になって侍女の名前を呼んで駆け出したら、転んでしまったのです」
「あの時私は隣の草原エリアで騎士の訓練をしていた。
仲間の1人が片思いの相手に花を持って帰ると言い出して、彼に付き合わされて庭園によったんだ」
私達はしっかり手を繋いで庭園を歩いていた。
「あの時、仲間の1人が猫が泣いているって言ったんだ。
他の奴が猫なんていないだろって言っていたら、確かに泣き声が聞こえた。
でも、猫ではなく子供の泣き声だって、皆で探し始めたんだ」
「転んだ後、足を捻ってしまった様で立てなくなって、どうしていいか分からず泣いていたんです。
そしたら大丈夫かいって聞こえて
顔を上げたらヴォルフ様が」
そうだ、とても優しい声で声を掛けてくれた。
しゃがんで目線を合わせて、微笑んでくれたから、とても安心出来たんだ。
「仲間が皆で囲んだら怖がられるから、お前が行けって言われたんだ」
「あの時はお互いこんな未来は想像もしていませんでしたよね」
私は殿下と合わないと悩み出す少し前の事だった。
あの時のヴォルフ様がまるでお姫様を助けに来てくれた王子様の様に感じてドキドキした記憶が流れてくる。
「きっと、こうなる為の布石だったんだよ。
私達は運命の出会いをここで果たしたんだ」
ヴォルフ様がそんな事言ってくれるなんて、ちょっと驚いた。
でも、嬉しい。
「本当にそうかもしれませんね。
私達の赤い糸はここで繋がったのですね」
これから、長い時間を一緒に歩んで行く内に、ケンカもあるかもしれないし、また困難な事に巻き込まれる事だってあるかもしれない、そんな時には今日の事を思い出そう。
2人の関係を見失いそうになったら、またここへ来よう。
私達の大切な思い出の場所に。
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