上 下
227 / 286

思い出の場所

しおりを挟む
王都の南側 人工の森を中心に庭園と草原や池などを配している。
王都最大の公園が王立国営公園だ。

ここの庭園が私達の出会いの場所でもあった。
まだヴォルフ様が学校で騎士の訓練を受けていた頃。
私はまだ11才。

その頃の思い出に想いを巡らせながら、今またこの庭園で2人でいられるなんて。

「懐かしいですね。あの時クレマチスの花がとてもキレイで一緒に来た侍女や護衛をおいてあちこち歩き回ってしまって、気が付いたら周りに誰もいなくて。
不安になって侍女の名前を呼んで駆け出したら、転んでしまったのです」

「あの時私は隣の草原エリアで騎士の訓練をしていた。
仲間の1人が片思いの相手に花を持って帰ると言い出して、彼に付き合わされて庭園によったんだ」

私達はしっかり手を繋いで庭園を歩いていた。

「あの時、仲間の1人が猫が泣いているって言ったんだ。
他の奴が猫なんていないだろって言っていたら、確かに泣き声が聞こえた。
でも、猫ではなく子供の泣き声だって、皆で探し始めたんだ」

「転んだ後、足を捻ってしまった様で立てなくなって、どうしていいか分からず泣いていたんです。
そしたら大丈夫かいって聞こえて
顔を上げたらヴォルフ様が」

そうだ、とても優しい声で声を掛けてくれた。
しゃがんで目線を合わせて、微笑んでくれたから、とても安心出来たんだ。

「仲間が皆で囲んだら怖がられるから、お前が行けって言われたんだ」

「あの時はお互いこんな未来は想像もしていませんでしたよね」

私は殿下と合わないと悩み出す少し前の事だった。
あの時のヴォルフ様がまるでお姫様を助けに来てくれた王子様の様に感じてドキドキした記憶が流れてくる。

「きっと、こうなる為の布石だったんだよ。
私達は運命の出会いをここで果たしたんだ」
ヴォルフ様がそんな事言ってくれるなんて、ちょっと驚いた。
でも、嬉しい。

「本当にそうかもしれませんね。
私達の赤い糸はここで繋がったのですね」


これから、長い時間を一緒に歩んで行く内に、ケンカもあるかもしれないし、また困難な事に巻き込まれる事だってあるかもしれない、そんな時には今日の事を思い出そう。
2人の関係を見失いそうになったら、またここへ来よう。

私達の大切な思い出の場所に。

しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢に転生していたことに気が付きましたが、手遅れだったのでおとなしく追放に従ったのですが……?

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 公爵家令嬢であるフィオディーナは、自身の妹をいじめていた瞬間に前世の記憶を思い出す。状況が呑み込めず混乱する中、その光景を婚約者である王子に見られ、あっという間に婚約破棄を言い渡されてしまい、国土追放の島流しになった。  島流しにされた小舟から転落するものの、冒険者・アルベルトに助けられ、命からがら冒険者の島・ランスベルヒへとたどり着く。  ランスベルヒで自身の技術を生かし、術具の修理屋を開き、細々と生きていくことに。  しかしそんな日々の中、前世と今世の記憶が入り交じったり主軸が入れ替わったり、記憶があやふやなことが続く。アルベルトや、かつて帝国にいた頃に仲の良かった術士のウィルエールからアプローチを受けながらも、違和感のある記憶の謎に迫っていく。 【この小説は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

白い結婚のはずなのに、なぜ私を殺そうとしたのですか? など、恋愛小説短編集

ミィタソ
恋愛
時間がないときにも読めるショートや短編の恋愛小説になります。 ゾワッとする復讐劇から甘いラブストーリーまで、様々なジャンルが詰め込まれています。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

処理中です...