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初めての学校

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次の日、いつもより早い(らしい)時間に学校へ行く。
アンジェリーナには日常だけど、私(おばさん)には初めての学校だから、いろいろ見ておきたかった。

ここはこの国の王立貴族院高等学校。
とても高い立派な門をくぐり、石畳の道を歩いていく…アンジェリーナの記憶が流れ込んできて、まるで道案内をしてくれているようだ。

まっすぐ正面の建物に入らずに、右の小道に逸れて進んでいく。
しばらく行くと視界が開けた。そこは花壇がたくさん並んだ場所だった。

ここは…園芸部?
アンジェリーナは植物が、好きって言ってたな~
でも部活動は出来なかった… なんで?

アンジェリーナは放課後に週に数回お城へ王妃教育に行かないといけないらしい。その為部活に入っても満足に活動が、出来ないし、周りに迷惑をかけると思ったらしい。
今までのアンジェリーナは自分が我が儘を言えば迷惑する人間が出てくる事が申し訳ないから。
そう言っている。

もう!いい子すぎる!
自分で自分を抱きしめてしまった。

園芸部には入れないけど、朝ここへ来るのが楽しみなんだって。
朝露に濡れてキラキラ光る花ばなはとても綺麗だった

「え?何!」「!! ふぎゃ!」
不意に花壇の影から立ち上がった人がいて、突然のことに驚いて声をあげてしまった。
向こうも驚いて尻餅を、ついた。

「ご、ごめんなさい驚かせて。大丈夫?」
私は謝り手を差し出した。

相手はポカンとして私を見ている。
とても小柄で可愛らしい女の子だった。
大きな黒ぶちメガネをかけて、大きな瞳を真ん丸にしている。何となく小動物を連想させる。

「え?アンジェリーナ・ラフォール様?」
驚きながらも無意識に手を出してきた。

「怪我はない?」
私は彼女の手を引き上げて立たせた。

「ありがとうございます。大丈夫です。
すいません、こちらこそ私以外にこんなとこに来る人がいるなんて思ってなくて。私はバロー伯爵が娘でエミリーと申します」

「そう。エミリー様、私も毎朝訪れていたけれど、時間が合わなかったから、気がつかなかったのね」

「え?アンジェリーナ様も毎朝?でも園芸部でもないのに、なぜ?ってごめんなさい!差し出がましい事を」

「いいのよ、園芸部でもない私が毎朝園芸部の花壇を見に来るなんて、訝しむのも無理ないわ
私植物が、大好きなんだけど、園芸部には入れないから、せめて誰もいない時間に見せてもらっていたの」
そう言うと、

「園芸部に入れないのですか?」
エミリーはキョトンとしている。

「部活は放課後でしょ?私は放課後に予定を取られる事が多いから、皆さんに迷惑をかけてしまうもの。」

「ああ、なるほど。」
エミリー嬢は何となく言いたい事を察してくれた。

「で、でももしアンジェリーナ様が園芸部に興味がおわりなら、一度遊びにいらっしゃいませんか?
いつでも見学出来ますし…あ、申し遅れました。
私、園芸部部長をしています!」

そう言ってペコッと頭を下げる。
仕草も小動物ぽい。思わず微笑ましくみてしまった。

心の中でアンジェリーナが喜んでそうな気がする。
「是非、遊びに行きたいです!
…本当に行ってもいいかしら?」
ちょっと大きい声になってしまった。
アンジェリーナの気持ちに同調してしまったかな…

エミリーは大きな瞳を更に大きくして、
「もちろんです!」
と満面の笑顔で言ってくれた。
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