王女殿下は家出を計画中

ゆうゆう

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過去の罪

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部屋へ帰って、灯りの下で見るとそれは墨のように黒い子猫だった。
ソファーのクッションの上に子猫を置いた。

血のように赤い目を私に向けて、鳴くこともなく、騒ぐこともなかった。
「お前は迷子なの?真っ赤な目ね。名前をつけてあげるわ。ティントよ」
そう言うといきなり子猫が光だした。そして今まで猫が居たところに真っ黒な長い髪の男が立っていた。
「!だれ?」
男は、見た目は私よりも年上かもしれない…でも…
でも、人にしては、あまりにも小さかった。

《オレは精霊さ、名前を付けられたからこの姿が見えるんだよ》

精霊…ティントは闇を司る精霊だと言った。名前を付けられると契約を結んだことになるらしい
そして私の負の感情が自分を呼んだとも言った。

ティントは闇の精霊だから、負のエネルギーはご馳走なのだそうだ。
そしてティントは言った。
《お前が望むなら、オレの闇の力を貸してやる。
お前程の魔力があればオレの闇の魔法を使う事も可能だろう》

《お前は何を望む?》

精霊に聞かれ、私は自分の中に渦巻く嫉妬と憎悪、妬み失望
その思いの全てをティントにぶつけた。

それからティントはいろんな闇魔法について教えてくれた。
その中でも上級魔法の部類に入る呪の魔法について教えられた。
これは相手を呪いの力で不治の病に侵す魔法だ。
病気にするだけなのに、なぜそこまで上級魔法なのかと言うと、魔法を使った相手にまったく気がつかれず、周りで見ていてもわからない沈黙の魔法だからだと言う。
人に知られないなんて、うってつけだ。
私はこれをマチルダに使う事にした。

ただ、この魔法は禁術と呼ばれているほど、恐ろしいもので、その上とても難しく失敗もしやすい魔法だそう。
その上魔力の質がこの国と精霊の国では違うから、大きな術になればなるほど、時間や魔力を使いいろんな段階を踏んで構築しないと、ティントや私に危険が及ぶらしい。

王宮に戻った私は人払いをして、ひたすら魔力を使い術を構築していった。
幸いにもティントは私以外見えなかったし、私の怒りを買いたくない侍女も何も言ってこなかった。
そしてついに私の魔力を注ぎ込み終わった術式が出来上がった。
後はあの女に向かって放つ機会があれば…

そしてあの日、怪我をしたエドワードの所へ見舞いに行くと、マチルダがいた。
部屋にはちょうど侍女や護衛の姿もなく、エドワードは寝ていた。

この好機を逃したら、彼女に術を使う事は出来ないかもしれない。
私はこの場で闇の呪い術を使う決断をした。
少し話をして、マチルダが部屋を出ていこうとした時、後ろから術を放った。
呪いはマチルダの体に吸い込まれていった。

その刹那、マチルダの背中から私に向かって光が放たれた。
私には少しの衝撃があったが、マチルダは気がつかすそのまま出ていった。
「なに?どうなったの?成功したの…ティント?」
《いや、跳ね返されてる あの女は光の魔法を使えるのか?》
「え?知らないあの女が聖光魔法を使えるなんて」
私はマチルダが微かだが聖光魔法を使える事実をしらなかった。
《光の魔法を持ってるなら、全てではないが跳ね返されてイザベラもただではすまなくなる…契約精霊のこのオレも…》

「そ、そんな」

その後部屋に戻った私はマチルダが体調を崩した知らせを聞いた後自分も意識を失っていた。


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