王女殿下は家出を計画中

ゆうゆう

文字の大きさ
上 下
18 / 87

隠されていた事

しおりを挟む
花火の打ち上げをイザベラ様が協力?
あの方がそんな事を?

そうか、イザベラ様は火属性をお持ちの上に、相当な魔力があったはずだからそんなに大変な事ではないのかも…
それに、収穫祭で上げる花火となると、自分の事を国民にアピール出来る訳ね。
もしかしたら、お父様に対してのアピールもあるかも…
だとしたら、何でいきなり止めちゃったのかな?
何となく気になる…

「ずいぶん考え込んでるね」
お兄様に顔を覗き込まれた。

「え?ああ、ごめんなさい考え込んで。
何で止めちゃったのかなぁって気になって」

と、ここで言葉を止めた。安易に大勢の前で言うべき事ではない。

「お兄様」私は兄だけを通路の裏側に連れていく。

「もし、本当にイザベラ様が花火の打ち上げに関わっていたのなら、突然止めたことに違和感を覚えます。
イザベラ様なら自分を認めさせるいい機会を、自分から止めるとは思えません。
しかもお母様が亡くなった後なら、お父様にアピールするいい機会でしょ?」

「確かにね。あの人の性格を考えると違和感を覚えるな… ただその頃の詳細が分からないことには何とも言えないよ」

「私、これから魔法棟へルカルク様にお会いしに行ってきます」

魔法棟は王宮の東にある建物で魔法省の機関と魔法研究所が入っており、この国の魔法に関する全ての管理、指導教育、補佐等を行っている。

ルカルク様は魔法省の特別顧問と魔法研究所の前所長をされていました。
今は一線を退かれご自分の研究を優先されています。
私はたまにルカルク様のところへ行って、いろいろな魔法の話を教えてもらっていました。

ルカルク様は王族としては、出来損ないと言われる私を、一般の魔法使いより魔法の知識は優秀だし魔法の質が高いといつも誉めてくれるのです。

私にとっては、やさしいおじいちゃんみたいな存在です。

「じゃあ私も一緒に行くよ。どちらにしろ花火を行うなら、話を聞かないといけないから。」

借りた本をエマリアとルイスに預け、先に部屋に戻ってもらい、私はお兄様と一緒にルカルク様のもとへむかいました。


◇◇◇◇◇

コンコン!

ルカルク様の研究室のドアをノックするとすぐに
返事が返ってきます。

「こんにちは、ルカルク様。少しお時間頂けませんか?」
私が声をかけると、机から視線をあげたルカルク様が
嬉しそうに破顔しながら、答えてくれました。

「おお、シルビア様どうされました?
おや?殿下もご一緒でしたか。」

「ちょっとお聞きしたいことがあるのです。」

「どうぞ、こちらへ
何をお聞きになりたいのですかな?」

私達は、ソファーをすすめられ、お兄様と並んで座ると私から切り出します。

「私たちが子供の頃、収穫祭で花火を打ち上げていたと聞きました。その事をルカルク様が詳しく知ってらっしゃるとも。
花火を上げなくなった詳細をお聞きしても?」

ルカルク様は遠い目をして昔を思い出すように、

「ああ、その事ですか…確かに花火をあげておりましたな~結構大規模で、城下の者も毎年楽しみにしておりました。」
そして顎ひげをなでながら、
「あれは、いつから止めたのだったか…」

「母上が亡くなった年からと聞いたのだが」
お兄様が促します。

「ああ、そうでした!確かに王妃様がお亡くなりになり、国全体が悲しみに包まれ、その年と次の年の収穫祭はなくなりましたな…」

「あの時は、自分の無力さを思い知らされました。」
目を閉じてじっと痛みに耐えるような顔をされてるルカルク様。
この人もお母様を救えなかった自責の念に苛まれているのだろう。

つかの間3人が各々母への無念の想いを巡らす。

私は気を取り直して口を開いた
「翌々年からは収穫祭は開かれたのでしょ?どうして花火は再開しなかったのでしょう?
遠いある国では死んだ人の魂を慰める為に花火を上げると聞いたことがあるのですが…
お母様を思ってなら反対に上げることで、民に王妃を悼んでもらえるのでは?」

「なるほど。そのような考えを持つ国がありますか。
王妃様が亡くなったのに、不謹慎だからと言うことではありませんでしたな。
単に今までのような大規模な花火を打ち上げるだけの火属性の魔法使いが足りなかったと言うことです。」

「「え?」」
私とお兄様は顔を見合せます。

「ルカルク、花火を上げる為にイザベラ様が協力していたときいたが?
あの方の魔力量なら普通の魔法使い10人分や20人分補えたのではないのか?」

「はい、確かにそれまではイザベラ様が1人で花火を打ち上げてくれていました。」

そこでルカルク様はちょっと考え込んで、息を吐き出しました。

「これは、機密事項です、本来はお話するには、陛下の許可がいります。」
私達は息をのみます。
一応部屋の中には私達しかいません。護衛は外の扉前です。この部屋には会話を盗み聞き出来ないように盗聴防止の魔法もかかっています。

でも、機密と言われると無理には聞き出せません。


「なので、これはじいさんの独り言だと、思いこの部屋を出たら、お忘れ下さい。」

ルカルク様は絶対に漏らさないように釘をさしつつも、私達2人を信頼してくれてます。

私達が頷くのをみて、話し始めます。

「イザベラ様は王妃様が亡くなった頃から、魔力量が極端に減ってしまわれたのです。
今では魔法使いの平均値と変わりますまい。」

「それを知っているのは?」

「この事実を知られた陛下はすぐに箝口令を引かれました。なので国王陛下と魔法省の幹部のみかと。」

私は思ってもみなかった、話に言葉を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄は誰が為の

瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。 宣言した王太子は気付いていなかった。 この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを…… 10話程度の予定。1話約千文字です 10/9日HOTランキング5位 10/10HOTランキング1位になりました! ありがとうございます!!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

処理中です...