不貞の濡れ衣を着せられて婚約破棄されましたがお陰で素敵な恋人ができました

一体だれが？

「あそこで私とステラ嬢が一緒にいたのは、そちらのデボラ嬢に頼まれたからでしょう？
先程言いましたよね？
ステラ嬢を性悪女だと嘘をついて私に依頼してきたって」
ジュリアンはそう言いながら、デボラを見る。

デボラは青い顔で黙っている。


「あの、どういう事ですか？
姉が侯爵に依頼をしたのですか？」
エドガーは初めて聞く話に、戸惑っている。

ジュリアンはエドガーの為に最初の経緯から、順を追って話して聞かせた。

「では、ステラはあの時私を裏切っていた訳ではなかったと？」

「裏切るも何もホテルのラウンジで話をしていただけでしょう？
それなのに、あなたの姉上がいきなり騒ぎだした。
おかしいと思いませんでしたか？」

「すいません、ステラが他の男と通じていたと言う姉の言葉に動転してしまいまして…
それにあなたは直ぐにどこかへ行ってしまわれたから。
余計に相手はまずい所を見られて逃げたのかと思ったのです」

「それは、誤解をさせすまなかった。
でも、蔭からずっと見ていましたよ」
とまたニコニコと何が愉しいのか笑顔だ。

「我々の調べではあなたは関わっていなかったようだ。
だがダートン伯爵、伯爵家の人間がいくつかの法に触れる行いをしたのは確かなのですよ」
とアルフォンスは言う。

今聞いた話が全て本当なら、確かに法に触れているような事があるようだ。

いや、公爵達が嘘を言う理由がないだろう。
それよりはさっきからの母上の態度やいつもうるさい姉達が黙っている事の方が怪しい。

コンコン

ドアが開いて入ってきた侍従が公爵に耳打ちする。

「そうか、ではここへ連れてきてくれ」

誰かが連れてこられるのか？
今のこの状況でここへ来る第三の人物とは誰なんだ？

「ダートン前伯爵夫人、先程は煙に巻かれましたが我々も黙ってあなたの言い分を受け入れる訳にはいかない」

ジュリアンは婚約証明書を手に持ちながら、ジータに向けて話を戻します。

「なっ！　な…にを…」
ジータは目を吊り上げて、ジュリアンを睨みました。