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追い詰められる前伯爵夫人

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それはジータが作成させた偽の婚約証明書だった。
アンダーソン子爵に疑われない為に作った物だが子爵が不慮の事故にあった後、カミラに誰にも知られぬ様に始末するよう言い含めた筈なのに。

「これがここにある事が不思議ですか?
アンダーソン子爵家にあったこの証明書はあなたが婚約だと偽り子爵家から支度金を騙し取った証拠ですからねぇ。
そうか、婚約破棄だと偽り慰謝料だとステラ嬢から身ぐるみ剥いだ証でもありましたね」
とジュリアンが声を張っていいます。
そこには少なからず自分をも騙した怒りも含まれているようだった。

「な、何をおっしゃるのです。
そんな出鱈目、失礼じゃありませんか」
ここまで言ってもジータはシラを切る。

「おや、まだ惚ける気ですか?
あなたのお友達のカミラ・アンダーソン夫人はお認めになりましたよ」

一瞬グッと詰まったジータだったが直ぐに気を取り直した様にジュリアンとアルフォンスを睨み返す。

「アンダーソン子爵夫人が何と言ったか知りませんが、私共はステラ嬢をお預かりして、伯爵家に相応しい令嬢か見極めていただけですわ。
支度金だって子爵が娘の為に差し出した物です。
こちらが要求した訳でもありませんし。
それにそのような婚約証明書私は知りませんよ。
それともダートン伯爵家から渡された証拠でもおありなの?
大方カミラが子爵を説得するのに用意でもしたのでしょう?
婚約事態一番望んでいたのはカミラでしょうからね。
私共はどちらでも良かったんですよ、ちゃんと貴族として教育されたお嬢さんなら誰だって。
あちらが是非にって言うから、しぶしぶ応じたのに…
いくら公爵様だからって、このように文句を言われる筋合いはないと思いますけれども。
不愉快ですわ!」

元々勝ち気でプライドだけは高かった、その上その場その場で嘘を塗り固めてきたジータ。
追い詰められて反論をしているうちに気持ちも高ぶり止まらなくなったようだった。

「貴族の令嬢を使用人のように扱うのが伯爵家の仕来たりなのですか?
子爵令嬢に侍女の1人も付けずに身支度もすべて自分でやらせていたみたいですし。
随分と特殊なのですね。
彼女の為の支度金も何処へ消えたのやら」
今まで黙っていたアルフォンスが口を開いた。
その顔からはもはや笑みは消えている。

「ふん、あの娘が何を言ったか知りませんが邸にいる使用人全てをちゃんと把握しなければ女主人になった時に困りますからね。
いろいろ使用人から聞いておくようにとは言いましたよ。
侍女はもともと子爵家から連れてくるように言ったのに、あちらがそうしなかっただけの事です」
ジータの開き直りにエドガーも唖然としていた。
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