不貞の濡れ衣を着せられて婚約破棄されましたがお陰で素敵な恋人ができました

まさか

エドガーが男としての格の違いを感じて落ち込んだり、姉の言動で焦ったりしていた所へドアがノックされた。

入ってきたのは、やはり高級な礼服をきた爽やかな美男子だった。

サン・ジュスト公爵が夜の貴公子の様な厳かな雰囲気を持っているとするならば、今入って来た男性は太陽神の様な周りを明るく照らすような輝きを放っていた。

しかもエドガーはこの男の顔に見覚えがあるような気がしていた。
でも、どこで会ったか思い出す事は出来なかった。

「ああ、紹介するよ。私の従兄弟だ」

「どうも、ジュリアン・トリフュートといいます」

「トリフュート侯爵様…」
今度は侯爵…　この若き公爵と侯爵は従兄弟同士なのか。

年はそれ程変わらないのに、この２人を見ているとなぜこんなにも劣等感に苛まれるのか…

「あの、どこかでお会いしませんでしたか？」
今度はデボラが口を開いた。

「さぁ、どうでしょう？」
ニッコリと笑ったその顔を見たデボラが声をあげた。

「あっ、あなた…」
更に驚愕して、デボラは小刻みに震える。

「私が婚約者と出会えたのは、このジュリアンのお陰でもあるのだよ。
そしてダートン伯爵のお陰でもあるかと思ってね。
こうして来て貰った訳だ」
公爵は今まで微笑みをたたえていた顔を引き締めた。

「ま、まさか公爵様の婚約者って…」
ジュリアンの正体に気付いたのかデボラが言い出した。

その様子をどうしたのかと見ているジータとイゾッタ。

エドガーも混乱している。
デボラは公爵の婚約者を知っているのか？
私にも関係あるって…　まさか…

「あなた方には随分と我が婚約者のステラ・アンダーソンが世話になったようなので、一言言いたかったのですよ」

「え？」「やっぱり」

「ステラですって」
「ま、まさか」

エドガー、デボラ、イゾッタ、ジータの順で声をあけだ。

デボラとイゾッタに至ってはあまりの事に立ち上がってしまっていた。