婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

使えない？

「それなんですが、前男爵夫人の治療をしたと言うモンテディオ領の医者を見付けました。
腕の怪我はそこまで心配するものではないそうですが…　
顔の傷は治すのが難しいだろうという診断だったそうです」

サリーナの顔には火傷の様な爛れの上に鋭利な刃物の様な傷が３本付いてそれは顔半分近くに及んでいるそう。

「医者が言うには先代の男爵が生きていた頃はゲルドー領のみならずモンテディオ領でも噂されるほど美人だったから、傷を見た時は驚いたそうです。
しかし直ぐに治せと言われ無理だと言うと追い出されたそうです」

「それで、何人もの医者が呼ばれているのか？」
とパドック様が納得したというように言いました。

「はい、他にも呼ばれた医者に会いましたが、薬以外にも、ポーションも回復魔法も試したが全て効かなかったといいます」

そうでしょうね。
だって、神獣様の怒りを買ったのだもの。
サリーナの傷は傷じゃなくきっと呪いに近いモノなのでしょう。

「魅了魔法ってやはり見た目がよくないと、効かないのか？」
とカイルが疑問に思った事を言いました。

「そうですね…　見た目も１つの武器にはなりますが、基本的には相手に触れる、目を見て話しながら暗示に掛ける様な魔法ですので」

「ふーん。美人だなと顔を見ているうちに、目が合い話を聞いているうちに魔法に掛かるわけか」
とカイルが頷いている。

「エレーナ様は分かるかも知れませんが、身近にいて何度も繰り返し暗示に掛ける方が強力に縛れます。
もし、意志の強い人間の考え方を変える場合なら１度や２度の魅了魔法を掛けても直ぐに解けてしまうでしょうね。何度も何度も執拗に魔法を掛けていかないと操るのは難しい」
とパドック様が魅了魔法の説明をしてくれます。

ゲルドー男爵の側にいる人間達の魔法から覚めた様だと言う話は、魅了魔法が解けてしまった後、怪我のせいでもう一度掛け直す事が出来ないのではないかとパドック様は推測していた。

「怪我が魔法を掛けるのに、邪魔になるのか？　
それとも神獣様が付けた怪我のせいで魔法そのものを使えなくなっているのか？どちらかしらね」
と私の思った事を口にしました。