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パドックの独り言

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「セシリアになる事はもうありません。
パドック様、私を迎えに来る際はもうバイロン様を連れてこないで下さいな。
王子だったバイロン様からの謝罪は受け取りました。
許すかどうかは別ですけれど。
さようならバイロン様、もうお会いする事はありませんね」

私は最後にカーテシーをして、部屋を後にしました。

「パドック様、それではアランソルの国王陛下への報告はよろしくお願いいたします。
それと、昨日エレーナがお父上に宛てて手紙を書いたようです。
これをあなたに託してよろしいですか?」
大叔母様はパドックに手紙を渡します。

「お預かり致します。責任をもってパシュレーヌ侯爵にお渡しいたしますのでご安心下さい」

「よろしいお願いいたします。
それと彼の事も」
大叔母様はチラッともう動かなくなってしまったバイロン様を見ながら言いました。

「大丈夫です。
ちゃんと連れて帰りますよ。
1人でこの国に残したら、エレーナ嬢が心配ですからね。
この人は自業自得ですから、お気になさらず。
では私共はこれで」

パドック様はバイロン様を引きずる様に連れて帰っていかれました。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「そろそろ、正気に戻ってくれないか。
明日にはここを畳んで全員アランソルに向けて帰国するつもりなんだが…
他の町に散らばった部下達にも連絡はついた。国境の町で落ち合うから明日の昼には出発するぞ」

エレーナ嬢達と会ってから2日が経った。
あれから、バイロンは魂が抜けた脱け殻の様だ。

だが、こいつを置いて行く訳にはいかない。
聖女マリナに約束したのだから。

もともと個人的にエレーナ嬢に対してのバイロンの仕打ちには憤っていた。
大して調べもせず、彼女を罪人扱いして追放するなど、言語道断だ。
その上それが聖女かもしれない令嬢とくれば、我が家を敵に回したようなもの。

本来なら仲良く同じ屋根の下に居る事など我慢ならないがエレーナ嬢を探し出してアランソルに連れて帰る為に手伝わせ、もし出来るなら復讐の手助けでもしたかった。

だが、私が手を貸す事などせずとも聖女に覚醒したエレーナ嬢はしっかり一矢報いたようだ。

彼女の放った一撃は思いの外バイロンを苦しめている。

だが、それは自業自得だし同情する気はない。
私はこいつを身体的・・・には無傷でアランソルへ戻す。
それだけだ。
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