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教会を後にして
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セシリアは廊下に出て数歩、歩いて立ち止まり息を吐き出した。
「ふー」
と同時に身体の力が抜ける様な感覚に襲われる。
もう気を失ったり、震えたりはしない。
しかし相当緊張はしていたようだ。
「大丈夫か?」カイルに聞かれて黙って頷き再び歩き出した。
先程の小部屋に戻り、また3人を眺める。
大叔母様とパドックはまた話を続けていたが、バイロンはガックリと肩を落として項垂れていた。
「聖女マリナ様、本日は時間を取って頂きありがとうございます。
私はまだエレーナ嬢を探す事を諦めませんので、またお邪魔してもよろしいでしょうか?
そして、もし聖女マリナ様の元へエレーナ嬢から連絡があった場合お知らせ下さいませんでしょうか?」
「そうですね。
もし、連絡があれば知らせましょう。
ただ私と同様にエレーナも私との関係があると知らない気がしますよ」
とマリナ様は微笑んだ。
━パドック視点━
2人は教会を後にした。
バイロンは未練がましく後ろをチラチラ振り返っている。
「ほら、行きますよバイロン。
また訪問する許可も取りましたし、そんなに気落ちしないで下さい。
それにちゃんと会えたでしょう?
セシリアって言う女性に」
「会えた。会えたけど、話せたけど… 足りない!
私はもっと彼女を見つめていたかったのに。
パドック、彼女にもっと話をして引き留めてくれよ」
とバイロンは子供のようなわがままを言った。
「仕方がないでしょう。
シスターの手伝いを中断させていたのだから。
無理を言って嫌われたいのですか?」
「うぐっ」
バイロンは苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
全くわがまま王子の相手も楽じゃない。
一体誰の所為でこんな事になっていると、思っているのだ。
先王同様、自分の事しか考えられないばか野郎が、こいつがエレーナ嬢を追放などしなければ…
いやいや、今さらそれを言っても仕方がないのだパドック落ち着け。
自分で自分をなだめながら小屋に向かって歩いて行った。
気持ちを落ち着かせる為に聖女マリナと話した事を振り返ってみる。
聖女マリナはエレーナという血の繋がった娘がいる事をしらなかった。
私の父の事を覚えていてくれた。
聖女マリナはもし、エレーナに会って彼女がアランソルに帰りたくないと言ったらどうするのか?と私に聞いた。
エレーナ嬢が聖女に覚醒していて生きていると私は信じている。
そのエレーナ嬢がアランソルには戻らないと行った時、私はどうするのだろう。
私達魔導師が敬愛する聖女を無理やり連れて帰るなどしたくない。
だからこそ聖女マリナに対して父も祖父も彼女の意志を尊重したのだから。
では、わたしは?
同じように彼女の意志を尊重して、すごすご帰れるのか?
それとも説得するのか?
それでも彼女の気持ちが変わらなかったら?
そこで考えが止まってしまっていた。
想像だけでは自分の気持ちが固まらない。
やはりまずはエレーナ嬢を見付ける。
彼女を目の前にした時に私の気持ちも見えてくるだろう。
「ふー」
と同時に身体の力が抜ける様な感覚に襲われる。
もう気を失ったり、震えたりはしない。
しかし相当緊張はしていたようだ。
「大丈夫か?」カイルに聞かれて黙って頷き再び歩き出した。
先程の小部屋に戻り、また3人を眺める。
大叔母様とパドックはまた話を続けていたが、バイロンはガックリと肩を落として項垂れていた。
「聖女マリナ様、本日は時間を取って頂きありがとうございます。
私はまだエレーナ嬢を探す事を諦めませんので、またお邪魔してもよろしいでしょうか?
そして、もし聖女マリナ様の元へエレーナ嬢から連絡があった場合お知らせ下さいませんでしょうか?」
「そうですね。
もし、連絡があれば知らせましょう。
ただ私と同様にエレーナも私との関係があると知らない気がしますよ」
とマリナ様は微笑んだ。
━パドック視点━
2人は教会を後にした。
バイロンは未練がましく後ろをチラチラ振り返っている。
「ほら、行きますよバイロン。
また訪問する許可も取りましたし、そんなに気落ちしないで下さい。
それにちゃんと会えたでしょう?
セシリアって言う女性に」
「会えた。会えたけど、話せたけど… 足りない!
私はもっと彼女を見つめていたかったのに。
パドック、彼女にもっと話をして引き留めてくれよ」
とバイロンは子供のようなわがままを言った。
「仕方がないでしょう。
シスターの手伝いを中断させていたのだから。
無理を言って嫌われたいのですか?」
「うぐっ」
バイロンは苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
全くわがまま王子の相手も楽じゃない。
一体誰の所為でこんな事になっていると、思っているのだ。
先王同様、自分の事しか考えられないばか野郎が、こいつがエレーナ嬢を追放などしなければ…
いやいや、今さらそれを言っても仕方がないのだパドック落ち着け。
自分で自分をなだめながら小屋に向かって歩いて行った。
気持ちを落ち着かせる為に聖女マリナと話した事を振り返ってみる。
聖女マリナはエレーナという血の繋がった娘がいる事をしらなかった。
私の父の事を覚えていてくれた。
聖女マリナはもし、エレーナに会って彼女がアランソルに帰りたくないと言ったらどうするのか?と私に聞いた。
エレーナ嬢が聖女に覚醒していて生きていると私は信じている。
そのエレーナ嬢がアランソルには戻らないと行った時、私はどうするのだろう。
私達魔導師が敬愛する聖女を無理やり連れて帰るなどしたくない。
だからこそ聖女マリナに対して父も祖父も彼女の意志を尊重したのだから。
では、わたしは?
同じように彼女の意志を尊重して、すごすご帰れるのか?
それとも説得するのか?
それでも彼女の気持ちが変わらなかったら?
そこで考えが止まってしまっていた。
想像だけでは自分の気持ちが固まらない。
やはりまずはエレーナ嬢を見付ける。
彼女を目の前にした時に私の気持ちも見えてくるだろう。
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