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パドックと言う魔導師

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バイロン様の言葉は意外だった。
ただ、大叔母様の前で取り繕った言葉なのか、心から出た本心なのか…

どちらにしろ、やはり記憶の中にはないような様子のバイロン様だった。

エレーナの記憶に残るバイロン様はいつも眉間にシワを寄せて自分を見ながら、嫌みや文句を言っている。
もしくはリリアーヌの横でだらしない程にやけた顔で彼女のわがままを聞いていた。

だから、こんなに真剣な顔で話す彼を見たのは初めてに近かった。

「バイロン様ってあんな顔も出来るのね…」
私はとても小さな声で呟いていた。


バイロン様を、じっと見つめていた大叔母様が彼の印象をどのように感じたかは分からない。
後で聞いてみたかった。

「そうですか、あなたの気持ちは分かりました。
そのエレーナという娘にしてしまった罪が消える訳ではないけれど、誰にでも謝罪の機会は与えられるべきですからね」
とマリナ様は言いい、今度はパドックを見た。

「それでは、あなたはなぜエレーナを探すのです?
これは私の感ですけれど…
ただアランソルの国王の指示と言うのではないように思えるのですが」


そう言われたパドックが目を丸くした。
「聖女の心眼は侮れませんね。
我が家は代々アランソルでも珍しい魔導士の家系です。
実はあなたがアランソルに現れる予言を私共はしていました。
あの頃少ない魔力保持者で一生懸命聖女が現れる予兆を探し回っていたのです。
まさか国王によってそれを邪魔されるとは思いませんでしたが…」

「では、あの時当時の王太子と一緒にやって来た魔法使いはあなたの親族の方?」

「ええ、私の父です。
聖女様にお仕えすると言う我が家の悲願を潰された上、国自体が滅びようとしていましたから。
祖父と父は王太子に進言したのですよ」

あの時自国で王の粛清を進言したのは、目の前にいるパドックの一族だったと言うのだ。

「あの時、聖女様の慈悲の力で我が国は救われました。
今回またこのような事が起こってしまった事は私としては遺憾でしかないのですが…」とチラッと横のバイロンを冷ややかに見ます。


「そうですか、あの時の方の息子さんだったの。
お父様は一生懸命私に謝ってくださいました。
そしてどうかアランソルに戻って自分達を導いてほしいと言っておられた。
あなたもエレーナを探し出したら同じように言うのですか?」

マリナ様の問いにパドックはちょっと考えてからニッコリ笑って
「そうですね。まずはエレーナ嬢に会ってみたいそれが本音です。
あなたにもとてもお会いしたかったのですよ。
こうしてお話も出来て私自身は半分気が済んだ」

「もしエレーナ嬢を無事見つけられて、彼女が私の様にアランソルに帰らないと言ったらあなたはどうしますか?」
とマリナ様が聞きます。

「そうですね。 どうするかな…
一応は説得を試みますが…
それでもエレーナ嬢が納得しなかったら… 」
パドックは何やら凄く悩み出す。

「まだ、考えが纏まりませんね」
と悩みながら言ってます。
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