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マリナ様、接触。
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少しして、大伯母様が部屋にやって来ました。
今日は大伯母様もいろいろと忙しいはずなのに、何だか申し訳ない。
「セシリア 倒れたと聞いたのだけど、具合はどう?」
「心配をさせて、ごめんなさい。
もう大丈夫です。
ちょっとショックを受けただけなの」
「ショック?」
カイルが私の代わりに説明してくれました。
その時の事は倒れてしまった私より詳しいから。
「まあ、ではアランソルの王子がわざわざこの教会に来ているのね」
そう言って大伯母様は少し考え込んでいる。
「カイル、その2人はもう教会を後にしたの?」
「いいえ、多分まだ大聖堂にいると思います」
「では、一緒に来て。
その者の顔を教えてください」
「分かりました。セシリアはここで大人しくしていろよ」
「そうね。もう少し寝ていなさい」
2人にそう言われて、ゆっくりする事にしました。
だって、1人になったら気が抜けてしまって身体に力が入らなかったから。
カイルが鍵を掛けて行ってくれたから、誰か入って来る事もないだろう。
私はもう一度目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ああ、あれですね。
右端にいる2人組、すぐそばに尾行を頼んだロンもいます。
多分金髪のアイツが王子ですよ」
大聖堂の入口に立ったマリナ様とカイルが小声で話します。
マリナ様はじっと彼らの様子を見ています。
讃美歌が終わり拍手が上がります。
2人組の男達は次の曲が始まる前に席を立ち上がり、こちらに歩いてきます。
マリナ様は入口から少し出たところに移動して、彼らを待ち構えます。
彼らが出てきて横を通ったその時、
「こんにちは、今日は教会のイベントにご参加頂きありがとうございます。
どちらから来られたのですか?」
とマリナ様は2人に向かって声をかけました。
いきなりの不意打ちに2人はぎょっとしています。
「あ、ああこんにちは。
たまたま通り掛かったのですが、美しい歌声が聞こえて来たので、寄らせて頂きました」
王子ではないもう1人のシルバーの髪の男が答えます。
「そうですか、楽しん頂けて何よりですわ」
マリナ様はニコニコしながら話しますが決して目を逸らさず、じっと2人を観察しています。
「良ければ、こちらをどうぞ今日来て下さった方にお渡ししているのです」
そう言って赤いリボンで出来た栞のような物を渡した。
「ああ、これはありがとうございます。いい記念になりますよ」
そう言って受け取った2人は行ってしまった。
「何を渡したのです?
皆に配っているなんて嘘でしょう?」
カイルがマリナ様に聞きます。
「ええ、私の魔力を、ちょっとだけ入れ込んであるわ。
いくら魔法に覚えがある人でも、分からないようにね」
「魔法に覚え… あの王子が?」
「いいえ、もう1人の銀の髪の男よ。
あれは魔導士ね。うっすらだけど魔力が漏れ出ていたわ」
とマリナ様がいいました。
今日は大伯母様もいろいろと忙しいはずなのに、何だか申し訳ない。
「セシリア 倒れたと聞いたのだけど、具合はどう?」
「心配をさせて、ごめんなさい。
もう大丈夫です。
ちょっとショックを受けただけなの」
「ショック?」
カイルが私の代わりに説明してくれました。
その時の事は倒れてしまった私より詳しいから。
「まあ、ではアランソルの王子がわざわざこの教会に来ているのね」
そう言って大伯母様は少し考え込んでいる。
「カイル、その2人はもう教会を後にしたの?」
「いいえ、多分まだ大聖堂にいると思います」
「では、一緒に来て。
その者の顔を教えてください」
「分かりました。セシリアはここで大人しくしていろよ」
「そうね。もう少し寝ていなさい」
2人にそう言われて、ゆっくりする事にしました。
だって、1人になったら気が抜けてしまって身体に力が入らなかったから。
カイルが鍵を掛けて行ってくれたから、誰か入って来る事もないだろう。
私はもう一度目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ああ、あれですね。
右端にいる2人組、すぐそばに尾行を頼んだロンもいます。
多分金髪のアイツが王子ですよ」
大聖堂の入口に立ったマリナ様とカイルが小声で話します。
マリナ様はじっと彼らの様子を見ています。
讃美歌が終わり拍手が上がります。
2人組の男達は次の曲が始まる前に席を立ち上がり、こちらに歩いてきます。
マリナ様は入口から少し出たところに移動して、彼らを待ち構えます。
彼らが出てきて横を通ったその時、
「こんにちは、今日は教会のイベントにご参加頂きありがとうございます。
どちらから来られたのですか?」
とマリナ様は2人に向かって声をかけました。
いきなりの不意打ちに2人はぎょっとしています。
「あ、ああこんにちは。
たまたま通り掛かったのですが、美しい歌声が聞こえて来たので、寄らせて頂きました」
王子ではないもう1人のシルバーの髪の男が答えます。
「そうですか、楽しん頂けて何よりですわ」
マリナ様はニコニコしながら話しますが決して目を逸らさず、じっと2人を観察しています。
「良ければ、こちらをどうぞ今日来て下さった方にお渡ししているのです」
そう言って赤いリボンで出来た栞のような物を渡した。
「ああ、これはありがとうございます。いい記念になりますよ」
そう言って受け取った2人は行ってしまった。
「何を渡したのです?
皆に配っているなんて嘘でしょう?」
カイルがマリナ様に聞きます。
「ええ、私の魔力を、ちょっとだけ入れ込んであるわ。
いくら魔法に覚えがある人でも、分からないようにね」
「魔法に覚え… あの王子が?」
「いいえ、もう1人の銀の髪の男よ。
あれは魔導士ね。うっすらだけど魔力が漏れ出ていたわ」
とマリナ様がいいました。
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