婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう

文字の大きさ
上 下
44 / 178

疑問と疑惑

しおりを挟む
改めて考えてみると、エレーナを捜索しているのは、なぜだろう…

侯爵令嬢が、冤罪で修道院へ送られる事になったが間違いを正し迎えに来ようとしてくれた。
ここまではいい。
ありがたいし、本来なら名乗り出て帰ればいいのだろう。

しかし私は聖女として覚醒してしまった。
今の私を見ても、お父様がエレーナだと分かってくれるかどうかも分からない。

いくらお父様が魅了魔法で正気ではなかったと言われても、私の記憶の中のお父様は私を虐げていたお父様。
聖女の力で心の傷が癒えても今までの記憶がなくなった訳ではないから今一つ父親を信用出来なくなっていた。

だから、私の方から名乗り出るつもりは今はない… 今は。

話はそれたけど、その迎えに行った侯爵令嬢が魔物に襲われて転落死していた。
亡骸がなくても、生きているとは思えない状況だ。
それなのに、なぜ?

なぜ、探すのだろう。

「…」

「セシリア? どうした?」
カイラード殿下に、声をかけられて物思いに耽っていた自分から覚めた。

「ごめんなさい、ちょっと疑問に思って…」

私は今考えた事を口にした。


「カイラード様、私自身はまだアランソルに帰って、お父様と対面するのが怖いし、今は大伯母様のおそばで聖女としての修行をしたい」

「うん」カイラード殿下が頷く。

「でも、はたから見たら聖女を我が物にしようとした前王はいないし、私を悪者に仕立てあげた義妹もつかまり王子も謹慎中。
だとしたら、エレーナが雲隠れしなければいけない理由は何だろうって」


「確かに、一見何の危険もない素直に名乗り出ればいいようにも思う。
だけど、いくら今のアランソル国王が立派な方でも、聖女になった君を見た時に前王のように愚行に走らない保証はない。
前例があるのだから。
だからこそじっくり見極める必要がある」

「そうよ、セシリアもしもの時にここなら皆であなたを守れる。
あなたのお父様には申し訳ないけど、もう少し様子をみないとね。
今のアランソルを信用出来るかどうかを」
と大伯母様もカイラード殿下に同意します。

「そう言った意味でも、エレーナ嬢を捜索している事が何か引っ掛かるんだ。
死体がなかったから、万が一生存していることを願っての事と言うなら分からなくもないんだが…」
とルネさんも疑念を抱いている事がわかる。

そう、みんな再びエレーナ捜索を始めた事に疑惑が浮かんでいるのだ。

「結局はその真意が分からない事にはこちらの出方も決められないって事さ」
とカイラード殿下が締めくくった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

王太子に婚約破棄され奈落に落とされた伯爵令嬢は、実は聖女で聖獣に溺愛され奈落を開拓することになりました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました

天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。 伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。 無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。 そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。 無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。

婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです

青の雀
恋愛
第1話 婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

処理中です...