婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう

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疑問と疑惑

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改めて考えてみると、エレーナを捜索しているのは、なぜだろう…

侯爵令嬢が、冤罪で修道院へ送られる事になったが間違いを正し迎えに来ようとしてくれた。
ここまではいい。
ありがたいし、本来なら名乗り出て帰ればいいのだろう。

しかし私は聖女として覚醒してしまった。
今の私を見ても、お父様がエレーナだと分かってくれるかどうかも分からない。

いくらお父様が魅了魔法で正気ではなかったと言われても、私の記憶の中のお父様は私を虐げていたお父様。
聖女の力で心の傷が癒えても今までの記憶がなくなった訳ではないから今一つ父親を信用出来なくなっていた。

だから、私の方から名乗り出るつもりは今はない… 今は。

話はそれたけど、その迎えに行った侯爵令嬢が魔物に襲われて転落死していた。
亡骸がなくても、生きているとは思えない状況だ。
それなのに、なぜ?

なぜ、探すのだろう。

「…」

「セシリア? どうした?」
カイラード殿下に、声をかけられて物思いに耽っていた自分から覚めた。

「ごめんなさい、ちょっと疑問に思って…」

私は今考えた事を口にした。


「カイラード様、私自身はまだアランソルに帰って、お父様と対面するのが怖いし、今は大伯母様のおそばで聖女としての修行をしたい」

「うん」カイラード殿下が頷く。

「でも、はたから見たら聖女を我が物にしようとした前王はいないし、私を悪者に仕立てあげた義妹もつかまり王子も謹慎中。
だとしたら、エレーナが雲隠れしなければいけない理由は何だろうって」


「確かに、一見何の危険もない素直に名乗り出ればいいようにも思う。
だけど、いくら今のアランソル国王が立派な方でも、聖女になった君を見た時に前王のように愚行に走らない保証はない。
前例があるのだから。
だからこそじっくり見極める必要がある」

「そうよ、セシリアもしもの時にここなら皆であなたを守れる。
あなたのお父様には申し訳ないけど、もう少し様子をみないとね。
今のアランソルを信用出来るかどうかを」
と大伯母様もカイラード殿下に同意します。

「そう言った意味でも、エレーナ嬢を捜索している事が何か引っ掛かるんだ。
死体がなかったから、万が一生存していることを願っての事と言うなら分からなくもないんだが…」
とルネさんも疑念を抱いている事がわかる。

そう、みんな再びエレーナ捜索を始めた事に疑惑が浮かんでいるのだ。

「結局はその真意が分からない事にはこちらの出方も決められないって事さ」
とカイラード殿下が締めくくった。
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