婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

癒しの力

「私、何か変な事いいましたか？」

私が後ろ向きな考えが出来ないと言ったら、大伯母様がニコニコと笑って私を見ているので聞いてみました。

「変ではありませんよ。
あなたには自分の力を自覚出来るように、訓練をしてもらってますね？」

私が頷くと、またニッコリ笑って
「あなたの中で巡り出した聖女の力は聖なる力です。
あなたの中の負の思いや考えはどんどん浄化されていきます。
あなたが邪な感情や怒りや憎しみに支配されたくなったとしても、もう不可能なのです」

ああ、そう言うことですか…
私が昔の自分のコンプレックスやそれによる厭な体験を聖女の力はどんどん癒してくれていたんだ。

私は自分の心の奥の深い悲しみを探ってみる…
あんなに辛くて悲しくて、悔しかったのに…
いつの間にか、その思いを見つける事が出来なくなったなっていた。

その代わりにどんどん沸き上がる、慈悲の心。

私のように辛い思いを抱えている人を癒してあげたい。
心に悲しみを抱きながら生きていく事の辛さはよく分かっている。
だからこそ、それが癒された喜びを知って欲しい。

自覚した瞬間からそんな思いが溢れすぎて、勢いだけで大伯母様に思いを伝えると、

「そうそう、自分が気付いた事体験した事がまた力になります。
そしてそれを感謝し、人に還元したくなる…
聖女の力が上手く循環し始めていますよ」
そう言ってもらえました。

「エレーナは人を癒す力が強そうですね。
私を手伝って教会に悩みを相談にくる人々の気持ちに寄り添ってみますか？」

教会にはいろんな人が救いを求めてやって来る。
話や懺悔を聞くのは、司祭様やシスターの仕事だが、この中で辛い体験で心を傷つけられた人やトラウマを負ってしまった人などは大伯母様が癒しているらしい。

「そうですね…　最初はあなたと同じくらいの女の子の癒しを頼みましょうか…　
明日、何人か来る予定があるから。
あなたも共感しやすいでしょう」

明日から私も聖女として役に立てそうです。