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魅了

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「お呼びでございますか?」

王城で国王陛下と面会しているアラン・パシュレーヌ侯爵はどこか定まらない視線を泳がせながら、陛下の前に跪く。

「面をあげよ アランわたしを見ろ!真っ直ぐ私の目を見てみろ」

「はい…」アランは恐る恐るゲルハルト王の目を見ます。

「やはり、お前は魅了されていたか…」

「何のことやら… 私は…」

「では、なぜあんなに可愛がって慈しんでいたエレーナの危機に何も声をあげなかった?」

「エレーナ? 誰です?
私の娘はリリアーヌと言い… エレーナ… エレーナ…」

「はぁー やはり娘の事を忘れているのか… おい、アランしっかりしろ!」
ゲルハルト王は侯爵のそばまで歩いていき、小瓶を開け侯爵の口に突っ込みます。

「うぐっ! げほっ へ、陛下何を げほっ 
 … うっ…  私はどうして…」

「正気にもどったか?」
ゲルハルト王は優しい眼差しで気遣う様に言います。

「陛下、私は…  クソッ!私は今まで何をしていたんだ」

「お前は魅了の魔法をかけられていた。お前が再婚した後妻とその娘の所為ではないか?」

「ベルダとリリアーヌが?」

「再婚するまでのお前はとてもエレーナを可愛がっていた。
なのに最近はエレーナの存在自体あやふやだったであろう?
その反面リリアーヌを溺愛し始めた」

「確かに、エレーナの記憶が曖昧です。あの子は? エレーナはどうしたのですか?」

「リリアーヌに唆されたバイロンに婚約破棄され、修道院へ送られた」

「何ですって! いや、確かに記憶の端にエレーナにシェリーの形見とお気に入りの手鏡を届けた様な気がします。
何と言うことだ!」

「落ち着け。 すぐに修道院へは連絡を入れる。
それからお前の養女はこのままとはいかないぞ?
騙された息子も悪いが王子に嘘を吹き込み陥れたのだから…」

「分かっています。
妻に対してももう未練はありませんし2人を拘束してください。
私を騙したのですから」

ゲルハルト王は直ぐに動き、エレーナの義母ベルダと義妹リリアーヌは捕えられた。

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