婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう

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これからの私

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食堂のおばさんはとても気さくで、お菓子を出してくれたり、お茶のおかわりを、気にしてくれたりとても親切にしてもらい、ささくれだった心がより一層癒されるようだった。

そして、カイルに用意が出来たと言われたので、おばさん達にお礼を言って馬車に戻った。

「さて、行くか」カイルが言いながら、馬を走らせました。

王都を出た時とは違い、眠ったお陰だろうか、少しスッキリして気持ちもいくぶん軽くなっていた。

窓の外の景色を楽しめる余裕も出て来た。
侯爵令嬢で、しかも王子の婚約者であった頃は王都から出ることもなく、こんな長閑な景色など見る機会もなかった。

随分と気持ちも和んで、馬車の旅になれた頃、ふとポケットの指輪を出して見つめました。
あの時、指に嵌めていたら、きっとリリアーヌに奪われていただろう。

手鏡なんて、取られてもいいがこの母の形見だけは渡したくなかった。
「良かった…」
そっと握りしめながら言いました。

この指輪は母が最後に私の手に乗せて、「エレーナ あなたが18才になったら、この指輪を嵌めてちょうだい」
と言われた物だった。

私は先日18になった。
18になって1ヶ月後に結婚する筈だったのだ。

それが18になって初めての夜会で婚約破棄されるなんて、思ってもいなかった。

「はぁー」
溜め息をついて、また指輪をポケットにしまった。

大丈夫。
修道院には意地悪な婚約者も、突っかかってくる義妹もいない。

もともと派手な事は嫌いだし、侯爵令嬢としては珍しいくらい大人しく、控えめな性格をしていた。

父親が再婚してからは、自分の居場所を求めて使用人達と過ごす事も多くなり、いろんな事を教えてもらった。
執事長は「侯爵家の令嬢がそのような事を」
とあまりいい顔はしなかったが、家の中の状態を把握している分、私の立場をわかってくれて、強く反対はしなかった。

だから、侯爵令嬢なのに私は料理も覚えたし、洗濯や掃除の仕方も使用人たちの横で見て覚えてしまった。

今思えば、無駄にならなくてよかったわ。
修道院に入れば、自分の事は自分でしなければいけなくなるだろう。
私が覚えた事はきっとこれから役に立つ気がする。

外の風景を見ている内に、頑張れる気がしてくる。

きっと大丈夫。

もうこれ以上悪い事は起こらないわ
そう思う事にした。

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