聖女派遣いたします

バランティ侯爵

本宮の国王執務室へ向かう。

歩いていると、バランティ侯爵
がやって来た。

「これはこれは聖女様。お久しぶりでございます」
バランティ侯爵は私の前まで来ると立ち止まり頭を下げた。

「侯爵様もお元気そうでなによりですね。
そう言えば、ご令嬢が嫁がれたのでしたわね。
良いご縁があってよろしかったですね。
おめでとうございます」

あの頃側妃に猛プッシュしていた長女がこの度他国との友好協定に一役買う形で相手国の第三王子の側妃に選ばれたらしい。

スーリアの国王陛下はいつまでも側妃を娶る事を承諾しない。
時間だけが無情に流れる中、花の命は短いのだ。

バランティ侯爵は娘を王に嫁がせる事に固執するあまり、自分の娘が適齢期ギリギリに来ている事を失念していた。

巷で最早行き遅れだの、先終わりの花だのと言われる年の娘をまさか王に押し付けるのか？と周りのライバル貴族に言われて、現実を思い知って断念せざる負えなくなった。

そして、今度は娘の相手をどうするかで慌て出す。
そんな時にパルディアン国との友好協定の話が持ち上がった。
そしてその話合いの間に第三王子が第二妃を探していると言う話を耳にする。
パルディアンの王族は妃を三人まで持てるらしい。

そこでバランティ侯爵はこの国が駄目ならパルディアン国とばかりに名乗りをあげたのだ。
次いでに友好協定が上手くいった証としてとか何とか両国に恩を売るような話までこじつけた。


これで終わりにすればいいものを、バランティ侯爵の野望は絶たれていなかった。
今度は次女と三女どちらかを何とかして側妃にと企んでいるのね。

「ははは、聖女様からお祝いのお言葉を頂き何とも光栄にございますな。
それより、聖女フランチェスカ様は、王妃様に仕えるために戻って来られたと聞きましたが何か王妃様に異変でもございましたかな？」

「まあ、その様な話をどうして侯爵が？
もしかして噂にでもなっているのですか？」
反対に聞いてみる。
そもそも私が王妃宮にいるなんて、限られた人しか知らないのだからそれを質問すること事態が王妃宮を探っていた証拠になると言うのに。

「え？　ええ　まぁ」

「あら？　どの辺りの方達かしら？
侯爵様訂正しておいて下さいな。
私は王妃様の所へ遊びに来ただけですのよ。
昔を懐かしむ王妃様の頼みで少し長めに滞在する事にしたのですわ。
私がちょうど休暇中だったものですから」

そう言うと当てが外れたと言わんばかりの顔を隠す事なく去って行った。

「まったく…」

気を取り直して、執務室を目指します。