聖女派遣いたします

ゆうゆう

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ブローチ

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やっと自分の置かれている立場が相当まずいと感じたロジェはブローチを入手した経緯を話し出した。

ロジェは王太后の離宮でも変わらず自分を優秀な侍女だと思って随分侍女長にも周りにもアピールしていた。
しかしこの数年全然相手にされず、不満を募らせていたようだ。

そんな時王太后が逝去し、離宮が解体された。
ロジェは王妃宮を希望して、今度こそ皆に自分を認めさせようと考えていた時に1人の魔道師が声を掛けてきた。
最初はローブを目深にかぶった魔道師を怪しんだロジェだったが、「君は随分と野心家のようだね。だけど自分の希望が通らないでカラ回りしているのが見えるよ」
とその魔道師に自分の現状を言い当てられたロジェは次第に魔道師の言葉に耳を傾けてしまったようだ。

ロジェは魔道師に悩みを話し、自分はとても優秀なのだから、もっと認められる筈だと訴えた。
すると、魔道師がブローチを出して言った。
「これを胸の真ん中に付けて、自分の希望を相手に伝えてごらん。きっといつもより相手が君の意見を聞こうとしてくれるよ」
そう言われたロジェはブローチなんて侍女が付けたら怒られるだけだと文句を言ったそう。

すると、「これは存在をあやふやにする魔法が掛かっているから、見つからないよ」
そう言うと魔道師はあっという間に姿を消したそうだ。



「その魔道師はどんな人?」
私はロジェに尋ねた。

「どんな… ローブをかぶって顔があまり見えなかった。
男だとは思うけたど、そんなに年寄りではなかった。それくらいしか分からない」
と項垂れる。

「その人と会ったのは、その時1度だけなの?」

「ううん、違うわ。
その後試しにブローチを付けてみたら、誰もそれに気が付かないから魔道師が言った事は本当なんだって思ったの。
そしたら、私が1人になるのを見計らった様にまた現れて信じたかって言われたの」

「その時も顔は分からなかったの?」
と聞くと頷く。
もしかしたら、魔道師本人も認識阻害魔法を使っているかもしれないと思った。

「また現れた魔道師は他に何か言った?」

ロジェはまた頷いて口を開いた。
「君が望み通り昇格出来たら、出来る限り王妃の近くに居るようにしてくれ。
王妃の近くで君が働いてくれれば、いつまでもそのブローチを使わせてあげるって」

王妃の近く… まさか。

「ドーリス!」

「わかってる!」

ドーリスはもう一度ブローチを先程より綿密に調べていく。

さっきは簡単な鑑定魔法しか行なっていなかったから。

「フランカの思った通りよ、魅了系の魔法はそれを隠す為のフラグだわ。
このブローチの本当の目的は盗撮よ」

やっぱり… 
〈見張られている気がする〉の視線の1つはこれだったのだ。

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