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物語の番外編

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一体、何が起こった、というのでしょう?

学園長の終わりの言葉を待っていたかのように発せられた言葉に、学園長もポカンと大きな口を開けて呆然としている。


私?それ以上に羞恥心の方が先に立つわよ?


だって、やっと!皆に注目されていたこの場から立ち去れるところだったのよ。


なのに!大きな声で呼び止められただけでなく、よ?


何、これ。何の罰ゲーム?もしかして私にも罰は用意されていたって事なの?



見事な金髪をかきあげながら容姿の整った卒業生と思しき男子生徒が、後ろからツカツカと歩み寄ってきて私の前に回って跪く。


「月の女神のように美しく、淑女の立ち居振る舞いも完璧な貴女に陰ながら想いを寄せていました。

しかし、貴女はアルフリート殿下の婚約者であり健気に尽くす姿に黙って身を引くつもりでした。

しかし、今はもう貴女は自由の身だ!もう私は遠慮はしません。

このザガンド国第七王子ローレンス・ザガンドと結婚して下さい!

勿論、貴女のお心が落ち着くまで婚約期間を設けます。ですからどうぞ遠慮なさらずに私の手をお取り下さい。」


そう言ってローレンス様は私に手を差し出しました。


え~と、、、、確かに留学生で居ましたわね、彼。何度かお話させて頂いた記憶もあります。


ですけれど、それだけよね?それだけなのに私に想いを寄せていたの?全く気付かなかったんですけど!


あ、陰ながら、と言っていたわね。それは気づかないか。


って、ちっがぁ~うっ!


それだけの関係なのに、があった後で、しかもこの場でなんてする?


なんで恥の上塗り、じゃないな、私がした訳でもないもん。恥を勝手に塗りつけられてるが正解じゃない?兎に角、恥ずかしいに恥ずかしいを重ねられて目眩がしてくるんですけどぉ!


あ~、また現実逃避したくなってきた。倒れちゃっていいかなぁ。


「「「「ちょっと、待ったぁ~!!」」」」


周囲から揃えたかのように声が上がった。



何、その古臭い掛け声、、、。


「傷ついたミレーヌ嬢を幸せに出来るのは僕だけです!」


「いいや、私だけだ!ミレーヌ嬢、貴女の気持ちは私が一番分かっています。どうか私と一緒になって下さい。」


「家格が釣り合わないと身を引きましたが、今なら貴女を幸せに出来ると自信を持って言えます!ですからどうか僕と!」


何人かの男子生徒が私の前に出てきて口々に叫び出した。


何なの?モテ期?いや、違うわよね。最後の男子なんて、なんかちょっと失礼な事言ってない?


・・・あぁ、最初にアルに婚約破棄された時にニヤニヤしながら私を見ていた生徒たちね。

ローレンス様はどこに居たのかは知らないけれど。まぁ、7番目の王子だと国でも他国でも影が薄いのかもね。



「「「「さぁっ!」」」」


他の卒業生たち、特に女生徒たちは、揃って私に手を差し出す彼らと私を交互に見て、呆れと私への同情を隠す事なく憐れみの瞳で見ているわ。


そりゃあ、そうよね。こんなの、全然羨ましくなんて無いでしょうね。本当にただの愉快な見せ物じゃない!


次第に私の身体が怒りでプルプルと震えてくる。ついでに涙も。


私の態度に彼らは『感動している』と勘違いしたのか、喜びの表情を向けてくる。


誰が感動するか!嬉し涙じゃなくて悔し泣きだわっ!



「・・・・・です。」


「「「「えっ?」」」」


ボソリと呟いた言葉は彼らには届かなかったらしい。


一昨日おととい来やがれ、ですわっ!」


悔し涙を目にいっぱい溜めたまま、キッと彼ら睨むように見て言った。


「散々、私が助けて欲しい、と目で訴えていた時には知らんぷりで言い寄ってくる人たちなんて、ぜぇ~ったいお断りです!」


私の言葉と淑女とは思えない振る舞いに彼らは口をポカンと開けて呆気に取られている。アルたちやお父様、そして会場中の人たちもそうだ。


「あなたたちだけでなく、会場の皆様も同じですわっ!

婚約解消となり私には婚約者が居ない状態になりますが、今日、この場に居る男性とは絶対に、何があっても婚約いたしませんっ!!!」


会場中を見渡して大声でハッキリと言った。言ってやったわ!!


確かにアルとの婚約は解消になる。瑕疵のついた私でも家柄はそれなりに旨味のある公爵家の令嬢だ。しかも父親はこの国の宰相でもある。


だから、婚約者が居ない私を伴侶に、と望む人がいるのも分かる。それにいずれ、家の為にも誰かと結婚しなければいけないだろう事も分かっている。


でも、アルに婚約破棄された時、同情の目を向けられる事はあっても誰ひとり、私の側に寄ってきて助けようとしてくれる人は居なかった。


お父様も友人たちも『やっちまえ!』じゃ無いのよ!そう思うなら側に来て援護射撃をして頂戴、ってやつよ!


あぁ、お父様がまた私の気持ちを察してか、顔色を悪くしてるわね。友人たちも私の気持ちに気づいたのか、済まなそうな顔をして近づいて来ようとする。


もう、いいやっ!皆の前で恥もかいたし、こうして淑女の仮面も剥がれ落ちた。だからー。


「私はもう、婚約なんてー。」


泣きながらそう言いかけた時、会場の入り口の閉じてあった扉がバンっと大きな音を立て勢いよく開いた。


「いつまで待ってもお声が掛からないので勝手に入って来てしまいました。

ですが、パーティーも始まっておらず、一体、これは何の騒ぎなのですか、?」


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