1 / 28
恥晒しの婚約破棄
しおりを挟む「ミレーヌ・シルフィード公爵令嬢!今日をもってこの私、ガルド王国第一王子アルフリート・ガルドとの婚約を破棄する!」
王立学園の卒業パーティーで第一王子アルフリートが声高に叫んだ。
隣には緩いウェーブのかかったピンク髪を一つに束ね、薄茶の瞳をウルウルとさせている美少女が王立学園の制服を着てアルフリートにピッタリと寄り添っている。
アルフリートの正面に立つのは銀髪ストレートな髪を腰まで伸ばした小柄な美少女ミレーヌ・シルフィード公爵令嬢だった。
ミレーヌは婚約者による突然の『婚約破棄宣言』に呆然としていた。いや、あまりの恥ずかしさに心の中では『気を失う事が出来たなら!』とパニックを起こしていた。
たった今『婚約破棄の宣言』をしたアルフリートと美少女の横には、赤茶髪のいかにも騎士というような体躯のギルバート・ギレアム伯爵子息も居る。
彼はアルフリートの側近であり、アルフリートとミレーヌの幼馴染でもあった。
彼らの後ろには名前は分からないけれどたぶん同級生が2人。どこかの子爵か男爵家の子息たちだったハズ。
この1年、アルフリート様やギルバート様たちといる所をよく見かけたわね。
それにしても、、、、
恥ずかしい。恥ずかしいっ!恥ずかしすぎるぅ~!!
ミレーヌは心の中で絶叫する。
卒業生が集まるパーティー会場で『婚約破棄』を言い渡されるなんて!
恥ずかし過ぎる!こんなの、時代遅れもいいところなのに!!
ガルド王国では過去のある出来事により20年ほど前に新たな法律が制定、施行されていた。
そして王立学園ではその法律を受けて特殊な校則が罰則とともに設けられている。
でも、それって入学前にしつこいぐらいに入学案内書類にも入学式でも話があったわよ?
勿論、各家庭でも幼少の頃から教えられ、入学前には更に念押しされるような貴族なら誰でも知っている法律よ?
まさかアルフリート様が知らないって事があり得るの?
頭の中が真っ白になりかけながらも、目の前で起きているあり得ない出来事に疑問が浮かぶ。
だってこの法律や校則が設けられたのは・・・。
「ア、アルフリート様、今日、この日この場所がどの様な場であるのか、ご存知でしょうか?」
両手を祈るように組みながら震える声で目の前の脳内お花畑集団に問う。
出来れば今のこの不味い状況に気付いて欲しい!
そしてもうこれ以上、私を巻き込まないで!と願いながら。
「当たり前であろう!今日は私を含む卒業生の為の卒業パーティーの会場だ!」
お前はそんな事も分からないのか?とでも言いたげに、馬鹿にしたようにアルフリート様が言い放つ。
・・・これは気づいてないわ。でも、ダメっ!お願いだから気付いて!
この場でやらかしちゃってる重大な過ちに!
そしてしつこいようだけど私を巻き込まないで!
何なら今すぐ帰りたいぃぃっ!
「ソウデスネ~。卒業パーティーの場ですよね~。そうだっ!私にお話があるのなら学園の応接室で話しましょうか?
さっ、行きましょう、そうしましょう!」
まだ間に合う!今ならまだ助かるわっ。
後ろ向きになる思考を抑えつけ、何とかこの場を収めようと頑張ってみる。足は羞恥でプルプルと産まれたての子やぎの様になっているし、気を許すと目から涙が溢れそうなのを気合いで戻す。
そして今はまだ驚きに立ち尽くすこの周囲の方々の私への態度が、哀れみの眼差しになる前にこの場所をさっさと立ち去りましょう!
「何を言っているんだ、ミレーヌ。私たちはこれから婚約破棄の祝いも兼ねて卒業パーティーを楽しむ予定なのだ」
あっ、あ~婚約破棄ね。
うん、この場合でその言葉は聞きたくは無かったかなぁ~。
「で、ではその話は後でゆっくりと別室で話し合う事にしましょう。それで今は卒業パーティーを楽しみませんか?」
まだ諦めないわっ!今ならまだ引き返せるわよ、アルフリート様っ。
もう既に周囲の目は私に同情的且つ哀れみの眼差しになっている気がするけれど気づかないフリよっ、ここは。
もう一度『お願い気づいて!』とアルフリート様に縋るように目を向けると、、、、。
あー、コレ、違う意味に解釈しちゃったかなぁ、うん。
「ミレーヌ、貴様、そんなに私との婚約を破棄したくないのだな。だが無理だ!
お前はこの私の愛しい人アリスを陰でイジメていたのだから。
そんな陰湿な者を将来この国の国王となる私の伴侶にする事などあり得ぬ!
絶対に婚約は破棄するぞ!」
『婚約破棄』・・・これで3回目かなぁ?
あぁ、また気が遠くなりそうだわ。
121
お気に入りに追加
1,766
あなたにおすすめの小説
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!
れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。
父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。
メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。
復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*)
*なろうにも投稿しています
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ?
白草まる
恋愛
自分よりも成績が優秀だからという理由で侯爵令息アッバスから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢カティ。
元から関係が良くなく、欲に目がくらんだ父親によって結ばれた婚約だったためカティは反対するはずもなかった。
学園での静かな日々を取り戻したカティは自分と同じように真面目な公爵令息ヘルムートと一緒に勉強するようになる。
そのような二人の関係を邪魔するようにアッバスが余計なことを言い出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる