元虐げられた公爵令嬢は好きに生きている。

しずもり

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レンとリアの旅 〜過去編〜

リアの冒険者生活

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 また今日も絡まれた。


 アメリアは地面にだらしなく転がる男をキッと睨みつける。アメリアよりも頭二つ分は背の高い男は、一見か弱そうな見た目の少女に投げ飛ばされたというのに、アメリアに睨まれて頬をポッと赤く染めている。


 絡んでくる男たちを片っ端から投げ飛ばし続けているが、これはもう" 一人前 "でいいのでは?と最近のアメリアは思い始めたのだが。


「リア、への道は険しいな。」


 幼児の頭を撫でるように、アメリアの頭を撫でるレンの表情にイラっとするのは何故だろう。


アメリアに対して口煩さかったレンはある時から随分と大人しくなった。アメリアがを聞いた辺りからだろうか。


「~だから、レンさんのいう" 一人前 "って、私が変な男の人たちに絡まれなくなるぐらい強くなったら、という意味だよね?
そうしたら一人前の冒険者として認めてくれるんでしょ?」


アメリアがそう言った時のレンの表情は、正に" 鳩が豆鉄砲を食ったような顔"だった。


おぉ~、鳩が豆鉄砲を食ったような顔って、的確な表現だったんだなぁ。


 アメリアがマジマジとレンの顔を眺めていると、ハッと我に帰ったレンが聞き返してくる。


「リア、お前は俺が認めるの意味をそう理解したんだな?」


「えっ!違ったの?」


質問に質問で返すようなアメリアの言葉に、一瞬、真顔になったレンは次の瞬間、爽やかとはほど遠い表情でニンマリと笑った。


「いいや、違わない。。」


そう言ったレンの表情は、笑顔ではあるけど、、、何か変?


思わず首を傾げたアメリアだが、その日からレンの説教時間がやや短くなったような気がする。説教自体は無くならないのだが。


 アメリアが一人前の冒険者になる日が来るのかは非常に怪しいところだが、それでも旅を続けながらアメリアは冒険者の経験もコツコツと積んでいる。


 パーテーン国のメリトという街に二人が滞在して二週間ほど経つ。


 この旅にはアメリアが『色々な国に行ってみたい!』という希望があるのだが、しっかりと冒険者として仕事を熟しているのは、アメリアの懐事情によるものである。


 依頼を受ける時以外は宿屋に泊まる事が多いのだが、レンの希望で安宿に泊まる事はあまり無い。
主にアメリアの為の防犯面を考えての事らしいのだが、何故だか二人は基本的に同室である。これもレンの希望で。

一緒の部屋に泊まるのならば、安宿でも良さそうなものだし、高級宿なら二部屋取れば良い、と思うのだがどちらもレンには却下された。


 まぁ、確かに高級宿は良い。室内は清潔だしお風呂もある。ベッドもふかふかで寝心地もすこぶる良い。


その点は満足しているのだが、その分出費も大きい。


 レンが宿を決めるのだから『俺が宿代を出す。』とは言うものの、" タダより高いモノはない "だし、" お金の貸し借りは無しで "、の意識が根強く残るアメリアが、レンの言葉に頷く事は出来ない。


 その結果、立ち寄った土地に冒険者ギルドがあれば、アメリアの旅費が貯まるまで依頼を受けて稼ぐ事にしたのだ。


 普段、Dランクの依頼を請け負う事が多い。主に魔物討伐系の依頼だ。


 当初、冒険者に成り立てのリアの指導担当者となったレンは、いくら自分を投げ飛ばす事が出来たとはいえ、リアの見た目と世間知らずな雰囲気から『冒険者の仕事はリアには向いていないかもしれない。』と考えていた。


体術を得意とするリアだが、対人戦と魔物の討伐は大きく違うし魔物の場合は仕留めなければならない。


" 生き物を殺す "


これは例えその対象が人間に危害を及ぼす魔物だったとしても、慣れる事が出来ない者は割といる。
その体に剣を突き刺す感触を嫌悪して弓を使う者もいるが、仕留めた後の処理も慣れるには時間が掛かる者は多い。


 魔物の解体は大抵の場合、冒険者ギルドの横に解体作業場が併設されているので冒険者がしなくても問題はない。
だがギルドまで運ぶまでに血抜きをするのは冒険者自身だし、討伐依頼の内容や魔物の大きさや特性によっては、その場で必要な部位のみを解体して持ち帰る場合も出てくる。


 リアにはリアの事情があって冒険者になったのだろうが、レンから見たリアには、正直、そこまでを想定して冒険者になったようには見えなかった。


だからレンはリアには少しづつそういった経験を積ませていくつもりで、初めは薬草採取を中心に依頼を受けるつもりだった。いや、実際に受けていた。


 薬草採取だって立派な依頼だし薬草を見分けるのだって簡単な事ではない。
先ずは三か月ほどは薬草を覚えながら依頼を受け、リアが薬草を探している間にレンは魔物に備えて護衛の様な役割をすれば良いと考えていた。


だが、ここでもリアはレンの想定外の実力を発揮する。

簡単な様で意外と手間取る薬草採取も難なくこなし、突然飛び出て襲いかかって来た小動物系の魔物も躊躇なく短剣を使って倒す。


呆気に取られるレンにリアは言う。


「" やられたらやり返す "、って面倒だからしないけど、" られる前に殺る "のは正当防衛じゃない?流石に人には適用しないけど。」


そ、そういうもの、なのか?


「い、いや、だが大丈夫なのか?」


「・・・・何が?」

 コテンと首を傾げて聞き返すリアの姿はとても愛らしいが、服には一角兎の返り血が盛大についているし、リアのその細く白い右手には絶命している一角兎が。


「小さな魔物だが怖くなかったのか?それに初めて魔物を、、、。」


 油断して負けたとはいえ、この頃のレンはまだリアの見た目と一般的な考え方でリアを見ているところがあった。

だってリアはまだ十六歳の女の子だし、美少女だし、、、。


 まぁ、つまりリアの事を同じ冒険者としてではなく、自分が守るべき対象少女と見ていたのだ。たぶん無意識の内に。


だから飛び出した一角兎に対して咄嗟に短剣で対処はしたけれど、内心では色々と動揺やらショックを受けていたんじゃないか、と思っていた訳である。


「う~ん。まだ死にたくは無いから、そういう意味では怖かった?

短剣では初めてだけど、包丁で魚を捌くのはいつもやってたし三枚おろしにするのは得意だったよ。

それに鶏をしめて自分で羽を毟るのから首を落とすのも何度かやった事あるから。」


 アメリアの前世の経験が役立っているし、それに今のアメリアは事が自然と身についている。これは今世の経験で得たモノだ。

 アメリアが生きていく上で必要な事ならばなんだって出来るしやってやる。

その覚悟はとうに出来ていた。
冒険者にならなくったって覚悟はとっくの昔に出来ていて、それが当たり前のアメリアには今更の事だったのだ。


アメリアの覚悟に気付いていなかったレンは、目の前の美少女の口から出てくる不似合いな言葉の数々に絶句する。


サンマイオロシ、とは?

鶏を自分でしめて羽を毟る、、、首を落とす。


・・・・・・・・・。


意外と経験豊富な十六の美少女だった、、、。



 そんな感じで、周囲の予想よりも早くアメリアは冒険者稼業に馴染んでいった。


 薬草採取は希少なモノ以外は数勝負で誰でも手軽に出来るので報酬も高くはない。その点、魔物討伐系は依頼のランクが上げれば上がるほど報酬が高くなる。

レンも一緒にいる事だし短い期間で旅費を稼ぐ為には、受ける依頼がDランク以上になるのは必然だったのだ。


 因みにアメリアは気付いていないが、Dランク以上の依頼を受ける事が出来るのは、レンとリアでパーティを組んでいるからである。
アメリアは自分たちがパーティを組んでいる事を旅の途中まで気づいてはいなかった。


 パーティを組んでいる。


 そう、例えレンがリアをとして認めたとしても、二人が離れて行動するなどあり得ない。

 パーティを組んでいても単独行動をする事が無い訳ではないが、『パーティはずっと一緒に行動するものだ。』とレンが一言そう言えば、『そういうものなんだ。』と納得してしまうのがアメリアである。


そういうところがリリーが心配していた世間知らずでどこか抜けているリアなのだが、真実を知ったら彼女がどう反応するのか?


まぁ、後に二人は恋人同士になったのだから許容されたのだろう。
もしかしたら、レンは何度か投げ飛ばされたのかもしれないが。



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ここまでお読み下さりありがとうございます。










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