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ハドソン領 領都
報告と意外な提案 4
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ジョー先生を探して欲しい、とハドソン伯爵に依頼したのは私だ。だから私がジョー先生に会わなきゃいけないのも分かるんだけれどね。
でもハドソン領には来ない、ララちゃんを診るのは私次第、と言われると『どうして?』という疑問が浮かぶ。
ハドソン領に来ない理由は、ジョー先生は誰かに追われているか、狙われていているから?
だけどそれなら私と会ってからララちゃんを診るかを決める、というのも変だよね。ハドソン領に来るつもりが無いのなら、態々私に会ってから治療するかどうかを決めるなんていうのもおかしい。それとも私と会ってからなら、ハドソン領に来るつもりがあるのかな。
「ハイド氏が何を考えてティアナに会ってから決める、と言ったのかは分からない。その点に関してはティアナの疑問には私は答えられない。
先ずどういった経緯でハイド氏と連絡が取れたのかを説明するよ。
私はハイド氏との面識は無いが、ティアナの母ローズマリーからティアナを診てくれる医師が見つかった事は彼女からの手紙で知っていたんだ。
当時、ティアナがどんな病気かは知らなかった。だが何人もの医師が匙を投げていて、やっと専門の医師が見つかった、とマリィはそれは喜んでいたよ。
だから君から魔力量過多で治療を受けていた、と聞いて専門の医師というのがハイド氏の事だろうと思った。そして彼に治療を依頼したのが誰かも見当がついた。ハイド氏に依頼したのが私の親友だろう、とね。
コスト侯爵と婚姻してからのローズマリーは行動を制限されていた。侯爵と一緒の社交以外では、侯爵家の仕事を全て押し付けられ、外出も商会の仕事がある時だけだった。
そのような状態の中、何人もの医師に断られた彼女が自力で医師を探す事は困難だった筈だ。しかも治療法が見つかっていない病気の専門家などはね。
今はこの国には居ないが私の親友は商会を営み、各方面に顔が効くほどの人脈を築いている。その彼が彼女にとって最後の頼みの綱だった筈だ。
今回、その彼に私はティアナから聞いた話とハドソン領の子どもに魔力量過多の症状が出ている事、その子の治療をお願いしたい旨をハイド氏に伝えて欲しいと依頼した。」
お母様が頼るという事は、ハドソン伯爵の親友とお母様も面識があったという事だよね。その親友さんは他国で商会を運営していてすごい人脈を持っているって事かぁ。きっと大きな商会なんだろうね。
他国に住んでいるという事は、商業ギルドの通信網を使ったとしても普通はそこそこ時間が掛かる筈。それでもこの短期間にその親友さんがジョー先生と連絡を取れて、更に返事まで貰っているから凄い。
「どうやらハイド氏は親友とは違う国に居るらしい。彼が何度かやり取りをした結果が、『直接ハドソン領には出向かない。』、『ハドソン領以外の場所でティアナと会った後に子どもの治療するかの返答をする。』と、言われたそうだ。」
この短期間で違う国に居る者同士で連絡を取り合えるというのはちょっと普通じゃない気がする。何度かやり取りをしたって事は、伯爵の親友さんとジョー先生は特殊な連絡手段でもあるのかな。
でも結局、直ぐにはジョー先生はハドソン領には来てくれない事、それも私次第で診察して貰えない可能性があるって事しか分かっていないんだよねぇ。私に拒否権は無くない?
「ハイド氏が居る国については教えては貰えなかったが、ハドソン領の南、隣のイーズ領のアターミという街でティアナと会うという連絡を貰った。
こちら側の意向を一切聞く気のない随分一方的な話ではあるけれど、早くて約一ヶ月後、アターミでハイド氏はティアナにのみ面会してくれるそうだ。」
「イーズ領のアターミという街で、ですか?イーズ領は聞いた事はありますが、アターミの街を指定する理由は何でしょう?」
前世で何となく聞いた事のあるような地名ではあるけれど何でそこなんだろう?
「ハイド氏が居る国がこの国の南に位置するシーズ王国なのか、それとも居場所の特定をされない為に敢えて南に下って来るのかは分からない。
ただイーズ領のアターミは観光客が国内外から押し寄せる人気の観光地なんだ。」
国内外からというと、人の出入りのチェックは厳しいんじゃないの?それとも逆にチェックさえすり抜けられれば、後は人に紛れられるから都合が良いとか?
「そういう理由で領都から出た方が良いと言ったのもある。実はアターミの街までは馬車で約三日程の距離なんだ。
だけどハイド氏がアターミの街に来るのは早くても三週間前後だろう?ハイド氏から連絡が来るまでの間、アターミに滞在するのも良いが、私としてはアターミに向かうまでの間に、ティアナにはハドソン領領主として仕事を依頼したいと思っている。」
「え、領都を出てからアターミに直ぐに行かないで、別の仕事をする為に別の街や村に滞在して欲しいという事ですか?」
ハドソン領領主として、と言われるとちょっと身構えてしまうよね。
ジョセフさんたちの一件があって、ハドソン伯爵にちょっと利用されたかな、って思いがあったから、『チャールズおじ様』と呼ぶのを辞めて一線を引いて接するようになった。それを伯爵も理解しているようで、『ティアナ』と呼び捨てにする事はあっても最初の頃のような態度やちゃん付けをしなくなっていた。
打ち合わせの時も軽い口調で話す事はあっても、シルクの件や私から提案した事以外で仕事の話をする素振りは今まで無かったのにな。
「実は王都方面からアターミの街へ向かう者は、ハドソン領の街道を通るのが一般的な旅行ルートなんだ。その街道にはハドソン領に属する幾つかの村や町がある。
旅行客が宿泊の為に立ち寄る町はまだ良いんだ。だが休憩などで立ち寄るだけの村などは特にこれといった特産品などが無いからか、街道を通る旅行客が多い割にはその恩恵を受けていないそうなんだ。
だからティアナにはその街道沿いの村や町に立ち寄った観光客がお金を落としていくような案を考えて欲しい。まちおこし、だっけ?ログワ村の時みたいな案を出して欲しい、というのが依頼内容だ。」
えぇっ!?
それはなんというか随分と大雑把な依頼、というか、アターミに行くまでにする仕事じゃなくない?
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます
でもハドソン領には来ない、ララちゃんを診るのは私次第、と言われると『どうして?』という疑問が浮かぶ。
ハドソン領に来ない理由は、ジョー先生は誰かに追われているか、狙われていているから?
だけどそれなら私と会ってからララちゃんを診るかを決める、というのも変だよね。ハドソン領に来るつもりが無いのなら、態々私に会ってから治療するかどうかを決めるなんていうのもおかしい。それとも私と会ってからなら、ハドソン領に来るつもりがあるのかな。
「ハイド氏が何を考えてティアナに会ってから決める、と言ったのかは分からない。その点に関してはティアナの疑問には私は答えられない。
先ずどういった経緯でハイド氏と連絡が取れたのかを説明するよ。
私はハイド氏との面識は無いが、ティアナの母ローズマリーからティアナを診てくれる医師が見つかった事は彼女からの手紙で知っていたんだ。
当時、ティアナがどんな病気かは知らなかった。だが何人もの医師が匙を投げていて、やっと専門の医師が見つかった、とマリィはそれは喜んでいたよ。
だから君から魔力量過多で治療を受けていた、と聞いて専門の医師というのがハイド氏の事だろうと思った。そして彼に治療を依頼したのが誰かも見当がついた。ハイド氏に依頼したのが私の親友だろう、とね。
コスト侯爵と婚姻してからのローズマリーは行動を制限されていた。侯爵と一緒の社交以外では、侯爵家の仕事を全て押し付けられ、外出も商会の仕事がある時だけだった。
そのような状態の中、何人もの医師に断られた彼女が自力で医師を探す事は困難だった筈だ。しかも治療法が見つかっていない病気の専門家などはね。
今はこの国には居ないが私の親友は商会を営み、各方面に顔が効くほどの人脈を築いている。その彼が彼女にとって最後の頼みの綱だった筈だ。
今回、その彼に私はティアナから聞いた話とハドソン領の子どもに魔力量過多の症状が出ている事、その子の治療をお願いしたい旨をハイド氏に伝えて欲しいと依頼した。」
お母様が頼るという事は、ハドソン伯爵の親友とお母様も面識があったという事だよね。その親友さんは他国で商会を運営していてすごい人脈を持っているって事かぁ。きっと大きな商会なんだろうね。
他国に住んでいるという事は、商業ギルドの通信網を使ったとしても普通はそこそこ時間が掛かる筈。それでもこの短期間にその親友さんがジョー先生と連絡を取れて、更に返事まで貰っているから凄い。
「どうやらハイド氏は親友とは違う国に居るらしい。彼が何度かやり取りをした結果が、『直接ハドソン領には出向かない。』、『ハドソン領以外の場所でティアナと会った後に子どもの治療するかの返答をする。』と、言われたそうだ。」
この短期間で違う国に居る者同士で連絡を取り合えるというのはちょっと普通じゃない気がする。何度かやり取りをしたって事は、伯爵の親友さんとジョー先生は特殊な連絡手段でもあるのかな。
でも結局、直ぐにはジョー先生はハドソン領には来てくれない事、それも私次第で診察して貰えない可能性があるって事しか分かっていないんだよねぇ。私に拒否権は無くない?
「ハイド氏が居る国については教えては貰えなかったが、ハドソン領の南、隣のイーズ領のアターミという街でティアナと会うという連絡を貰った。
こちら側の意向を一切聞く気のない随分一方的な話ではあるけれど、早くて約一ヶ月後、アターミでハイド氏はティアナにのみ面会してくれるそうだ。」
「イーズ領のアターミという街で、ですか?イーズ領は聞いた事はありますが、アターミの街を指定する理由は何でしょう?」
前世で何となく聞いた事のあるような地名ではあるけれど何でそこなんだろう?
「ハイド氏が居る国がこの国の南に位置するシーズ王国なのか、それとも居場所の特定をされない為に敢えて南に下って来るのかは分からない。
ただイーズ領のアターミは観光客が国内外から押し寄せる人気の観光地なんだ。」
国内外からというと、人の出入りのチェックは厳しいんじゃないの?それとも逆にチェックさえすり抜けられれば、後は人に紛れられるから都合が良いとか?
「そういう理由で領都から出た方が良いと言ったのもある。実はアターミの街までは馬車で約三日程の距離なんだ。
だけどハイド氏がアターミの街に来るのは早くても三週間前後だろう?ハイド氏から連絡が来るまでの間、アターミに滞在するのも良いが、私としてはアターミに向かうまでの間に、ティアナにはハドソン領領主として仕事を依頼したいと思っている。」
「え、領都を出てからアターミに直ぐに行かないで、別の仕事をする為に別の街や村に滞在して欲しいという事ですか?」
ハドソン領領主として、と言われるとちょっと身構えてしまうよね。
ジョセフさんたちの一件があって、ハドソン伯爵にちょっと利用されたかな、って思いがあったから、『チャールズおじ様』と呼ぶのを辞めて一線を引いて接するようになった。それを伯爵も理解しているようで、『ティアナ』と呼び捨てにする事はあっても最初の頃のような態度やちゃん付けをしなくなっていた。
打ち合わせの時も軽い口調で話す事はあっても、シルクの件や私から提案した事以外で仕事の話をする素振りは今まで無かったのにな。
「実は王都方面からアターミの街へ向かう者は、ハドソン領の街道を通るのが一般的な旅行ルートなんだ。その街道にはハドソン領に属する幾つかの村や町がある。
旅行客が宿泊の為に立ち寄る町はまだ良いんだ。だが休憩などで立ち寄るだけの村などは特にこれといった特産品などが無いからか、街道を通る旅行客が多い割にはその恩恵を受けていないそうなんだ。
だからティアナにはその街道沿いの村や町に立ち寄った観光客がお金を落としていくような案を考えて欲しい。まちおこし、だっけ?ログワ村の時みたいな案を出して欲しい、というのが依頼内容だ。」
えぇっ!?
それはなんというか随分と大雑把な依頼、というか、アターミに行くまでにする仕事じゃなくない?
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