上 下
71 / 297
イケアの街と面倒事

お願い事が多すぎやしませんか?

しおりを挟む
 屋台の方も大盛況で2日目も終わり、商業ギルド経由でレシピ販売した3軒のお店のフォローも無事に終わった。

明日からは他のお店にレシピの売り込みをする予定だ。と言っても目星をつけたお店に『料理レシピは如何ですか~。良かったら買って下さいね。』と試食を持って、少しお伺いに行く程度だ。

もうゴリ押しはゴメンなのだ。

それにその場でレシピを見せたり教えたりする事は出来ないので『お店で出したいと思ったら商業ギルドで買って下さいね~。』ぐらいしか言えないからね。


まぁ、どうやら『まんぷく亭』以外は普通の売り方だったみたいだけど、ゴリ押しした相手が悪かったと思う。

他の2軒のお店だったら、あんな風に文句を言われる事も無かったんじゃないかなぁ。

リサさんもダニーさんも、たぶん悪い人では無かったと思うし、大した説明もせずにゴリ押しで買わされれば腹も立つよ。


夕食を食べて部屋で休んでいると、セバスさんが訪ねてきてロイドさんから話がある、と呼ばれた。

セバスさんについて執務室に入ると、ロイドさんはソファに座っていて、横の壁には不機嫌そうなクリスが執事見習い姿で立っていた。


あれっ?クリスとしっかり会うのは3日日ぶり?

商業ギルドに行ったり、準備や屋台の出店で慌しかったもんなぁ。

クリスもロイドさんに何か頼まれていたのかな。

久しぶりに見たから何だか懐かしく感じるね。3日ぶりくらいだけど。


「やぁ、ティアナさん。フライドポテトの販売は順調のようだね。2日間とも凄い行列が出来ていたと聞いたよ。」


「ありがとうございます。料理人さんやアーニャさんたちをお貸し下さってありがとうございます。
私一人では出来ない事なので本当に助かりました。」


ソファに座ったまま頭を下げた。


「料理レシピも、もう3軒のお店で売れたらしいね。」


いや、それはギルド職員の売り込みだから。

もしかしたら、フライドポテトの方も、昨日、今日の行列を見て商業ギルドに問い合わせした人も居るかも知れないけれど。


「きっとティアナさんの料理レシピを購入したい店はどんどん増えるはずだよ。

ティアナさんの料理は、他では食べた事もない物ばかりで独創性があるからね。」


何だかロイドさんが褒めてくれているのに、嘘臭い笑顔なので褒め言葉がイマイチ信用出来ない。

それにを作っているだけだからね、独創性は皆無だよね。



「ラルフも君の料理を凄く気に入っていたよ。また食べたい、と言っていた。

ところで近々、兄のコーギー男爵ルードがこの邸に訪問するそうなんだ。」


「はっ、え?ルードさんて、この前の馬車の、、、。」



えぇっ!弟の馬車を襲わせておいてシレっと邸訪問なんてしちゃうの?

頭おかしくない?

ロイドさんも何でニコニコ話してんの?



「うん、馬車の件は何の確証もないし、仕掛けた人間も分かっていないんだよね。怪しい奴らは居るんだけどさ。

それでクリス殿にも目撃者や物的証拠が無いか、見つけるのに協力して貰っているところなんだ。

珍しくルードはイケアの別邸ではなくてコーギー男爵領に戻っていたらしいけれどね。」


という事は『犯人探ししていないっぽいし、俺大丈夫じゃね?』的に安心したって事か?


「まぁ、元々、この邸には月に一度は金の無心に来ていたし、2回、3回と来る事もあったからそろそろかな、とは思っていたんだよね。」


マジかっ!

そんなにお金の無心していて、殺そうとするなんて恩を仇で返すってやつじゃない!?

あぁ~、一々、貰いに行くのが面倒になったから乗っ取ろうとしてるとか?



「そういう事でね、ルードが来たら君の料理で、もてなそうと思っているんだ。」

はい?そういう事って、どういう事?

何で殺そうとした相手をもてなすの?しかも私の料理で、っておかしいでしょ。

クリスも渋面してんじゃん。


「えーっと、何で私の料理でもてなすのか聞いても?」


「あ、料理はレシピ登録してある物を中心にするので勿論ウチの料理人たちが作るよ。

君には新しい料理を2、3品考えて作って欲しいんだ。

ルードが気に入ったらお土産に渡すつもりだから、出来れば持ち運びやすく日持ちする物が良いんだけど。

あぁ、そうだ!レシピ登録の申請書類は先に私が貰っておけば、お土産で持たせても大丈夫だろう?」


え、何、この人。質問の答えになっていないし、お願い多くない?


コーギー男爵アホにティアナも紹介するつもりか?」


仏頂面アンド不機嫌な声でクリスが壁際から聞いてくる。

うん、それ大事よね。


「あぁ、食事の時だけは居て欲しいかな。食べた事のない料理に興味を示して話を聞きたがるだろうから。それ以外は一緒に居なくていいし外出してくれて構わないよ。」


もう晩餐に同席するの決定じゃん。これはお願いじゃなくて命令じゃない?






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました

結城芙由奈 
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】 20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ―― ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

処理中です...