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元侯爵令嬢は屋台と知恵を使って起業する

侯爵令嬢は屋台を手に入れた。但し、ボロい。

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屋敷を出て庭の隅にある物置小屋に向かった私はボロっボロの屋台の前に立っていた。後ろには晴れて専属侍従から解放されたクリスが立っている。


「ふふふ、本当に家から追い出されちゃったねぇ。」


「お嬢様の言う通り今日がXデーでしたね。ところでコレ、どうします?いっそ火魔法ファイアーボールで焼いてしまうとか?」


ボロ屋台を見て嫌そうな顔をしている。よくこんな屋台を見つけてきたよね?どうやってここまで運んで来たんだろう?


「ねぇ、クリス。私はもう平民になったしあなたの主でも無いよ。

だからお嬢様呼びなんかじゃなくて呼び捨てでいいよ?貴方の方が年上なんだし。お互いタメ口にしない?

それに今までも私の扱いが雑だったし、クリスに『お嬢様』とか言われると気持ち悪いんだけど。」


もう私たちは主従関係でもないしお互い平民同士の対等な立場だもん。それにが目覚めてからあまり『お嬢様』扱いされていなかったと思うんだよね。わざと『お嬢様』呼びして揶揄ってない?



「あ、ボロ屋台コレなら大丈夫だよ~。空間収納に入れるから。」



「はぁっ!?お前、前世持ちだけじゃなく空間魔法そんな能力まで手に入れてたのか?」


おぅ、早速お前呼ばわりかクリスよ。切り替えが早いね。やっぱり私の事を『お嬢様』とは思っていなかったでしょ。


「うん、目覚めてから魔法習得に頑張ってたもん。」


ドヤ顔で言ってみる。あ、『ステータスオープン!』はやっていないよ?ゲームとかやっていなかったからね。もし目の前に表示されたとしても分からないよ。見るだけ無駄だから試すつもりない。


「まだ目覚めて3、4日しか経ってないんだけどな。」



「細かい事はいいじゃない。それでね、こう~、デッカい倉庫を思い浮かべたり中は『時間経過無し』だとか『生物は入れられない』とかあれこれイメージして試してみたら出来ちゃった、へへっ。」


身振り手振りで表現しながら説明すると『あぁ。』と納得したようにクリスがニヤリと笑った。


「部屋の扉を開けたらティアナが手をくねくねさせていたのはそういう事だったのか。怪しい呪術の習得かと思ったわ。」



「ひどっ!契約切れたら容赦無いね!」


いや、確かに手をうねうねさせてたけど!


「対等がいいんだろ?それに侍従の時は素を出さないようにしていたからなぁ。結構、疲れるんだよ、猫被るのも。」


猫、被ってたんだ?でも割と侯爵家の女性たちに丁寧な口調ではあったけど塩対応してたのを見た覚えがあるけどな。


「あらっ、割とダダ漏れてたわよ!意地悪なとことか腹黒そうなところとか。」


これは本当!結構私に対しては特にね。



「それ、褒めてないよな?酷いな、あんなに心をこめてお嬢様にお仕えしていたのに。」


ニカっと笑った表情は私の専属侍従だった頃には見た事もない少年っぽい笑顔で一気に若返ったように見えた。とても私より10歳も上には見えないなぁ。もしかしてこの笑顔で誤魔化そうとしてない?


「兎に角、元家族あの人たちが追いかけてくる前に、さっさとこの場を離れた方がいいわね。それっ、と。」


私はボロ屋台に触れると空間収納に納めた。


「・・・・本当に使えるんだな、空間魔法を。」


呆れながらも感心したようにクリスが呟いた。


正直、こんなに簡単に無属性の空間魔法を使えるようになるとは私も思っていなかったよ。

これって所謂、異世界モノの定番な転生特典の強力チート持ちってやつかな?


それともイメージする事が大事な魔法の世界において、前世の世界の知識や物を思い出して具体的にイメージする事が出来る効果なのかも知れない。



「さ、さっさと行こうよ!」


私たちは物置小屋から離れるとコスト侯爵家の屋敷の門を抜けた。一先ず、今日の宿を探そうと王都の隣にある街、カントを目指して乗り合い馬車の乗り場に向かった。



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