美化係の聖女様

しずもり

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旅の出会い

閑話 アサド村に来た side ジョセフ王子

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面倒くさい勇者村をやっと出発する事が出来た。

出来た訳なんだが、結局、聖女の手掛かりは得られず、あの村の闇が知れただけ。
正直に言えば、閉鎖された狭い村の中での胸糞悪い話だと思った。

『魔王の生まれ変わり』だと言い出したのはあの村の者たちだった。その話が次第に広まり、勇者村の者が言い出したのだから、と信憑性のある噂として王都にまで届いたのだ。
そして女神様からの神託も降りて、噂はより確かなものとなった。

だがそれもあの村に行って、村人と会話してみれば考えも変わる。

ただの弱い者イジメの思い込みだけの戯言にしか聞こえなかった。本人たちにその意識は無いし、だと信じ込んでいるのだろう。
魔王と同じく、黒髪赤瞳に生まれたというだけで。


確かに神託も降りたのだから、魔王が復活しようとしているのだろう。だが、勇者村のウィルの息子が魔王の生まれ変わりであると信じる根拠はない。

聖女を見つけ次第、魔王討伐旅に出る予定だったが、どうにも雲行きが怪しくなってきた気がする。


それはアサド村に着いて更に強くなった気が、、、。




「は?何だって?」


「だから見た目が清楚で可憐な少女です」

「美人で胸もしっかりある大人の魅力と色気がある感じ?」

「気配りの出来る女性が望ましい」


「・・・・・・・・・」


アサド村の住人に聞き返され、ディーン、テオドア、ロイドが同時に答える。その三人の言葉に俺の従者が軽蔑の目を向けている。

レオン!何で俺にまでその目を向けるんだ!?

そしてロイド!今は聖女を探しているのであって、好みの女性を言い合っている場ではないのだぞ?というか、何でお前まで二人に張り合ってるんだ。
あれか?一緒に行動を共にしていて影響を受けているのか!?


「・・・・あんたら、一体、何しにこの村に来たんかのぅ」


勇者村を出てアサド村に着き、目に付いた村人に声を掛けただけなのに、何故、村人から不審な目で見られなければならないのだ。


「いや、この者たちの言葉は冗談だ。気にしないでくれ。

数日内でこの村にがやって来なかっただろうか?」


「若い女性ぇ?ウチの村は冒険者は偶に来るが、若い女性なんて滅多に来ないからのぉ」


ご老人が首を傾げているが、確かにアサド村に外から来る訪問者は限られているだろう。だからこそ、森を抜け、この村に聖女が助けを求めて来れば直ぐに気付いた筈だ。


「・・・ジョセフ様。何故、若い女性だと?」

「え?」

後ろからレオンに聞かれて何の事だか分からずに聞き返す。

「ですから、お探しの女性が何故、だと思われたのか、と伺っているのです」


「は?だって(聖女は)若い女性だろう?」


何を言っているのだ?と思ったままを言えば、レオンが盛大にため息を吐いて、先程の三人に向けた目をまた俺に向けてくる。


「えぇ~、きっと二十六、七歳ぐらいの大人の魅力バッチリなお姉さんだって。僕はそういうお姉さんに旅の疲れを癒して欲しいし」

「若い女性ではなく、美少女です」

「年齢は幾つでも構わないだろう、独身なら。不貞は駄目だが」


だからお前たちは何を言っているんだ、何を!

そう叫ぼうとして、ハッとしてレオンを見るとゆっくりと頷かれた。




俺の考えがコイツらと同じだとレオンは言いたいのか?


いや、確かに聖女の姿を見ていない俺たちは勝手に聖女の姿を想像していた気がする。

ディーンやテオの発言が正にそれだ。ロイドは天然ボケなのかよくは分からないが、俺も知らず知らずの内に、聖女は若い女性だと思い込んでいた、という事なのか?

だが、、、過去の魔王と勇者の話では聖女は若い女性だった筈だ。魔王を討伐した後に結婚しているのだからな。だから若い女性だと思って何が悪い!

半ば逆ギレにような気持ちでレオンを見れば、残念なモノを見る目で首を横に振っている。


「あぁ、そう言えば、ではないが、メアリーんとこの宿屋に子どもが来とったぞ」

「何っ?ご老人。子どもというのは女の子か?」

「んー。たぶんそうだなぁ」


何とも頼りない言葉だが、これは有力な手掛かりかも知れん。

・・・子ども。女の子、、、女の子かぁ。

「女の子かぁ。ねぇ、おじいちゃん、その子って幾つくらい?」

「んー、、、はて?この歳になると自分の歳も他人の歳にも興味が無くてな。十は超えていた気がするがなぁ」

「それは確かに子どもだな」

「いえ、まだ美少女の線は残っています」


ディーン、お前は黙れ!
レオンのお前を見る目つきが、残念なモノを見る目からゴミ虫を見る目に変わってきているぞ。


子どもだろうが、そうじゃなかろうが聖女であったなら迎えに行くのが我々の役目だ。子どもであったなら、急に知らぬ世界に召喚されてどれ程心細く思っている事だろう。

ご老人に礼を言って、俺たちは急いでメアリーの宿屋へと向かった。

だがー。


「女の子なんて知らないね。サッサと出てっておくれ!!」


まさか、アサド村を半日も経たずに出て行くことになるとは、、、、。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。


超久しぶりの更新となりました。
ずっと更新更新せずに済みませんでした。
等分の間は不定期更新となります。
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