美化係の聖女様

しずもり

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ガーナの街にて

閑話 魔王の噂 side ジョセフ王子

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三日三晩、昼間は" 勇者決定戦 "を、夜はを俺たちは受け続けた。


クソッ、本当に何でこんな事になったんだ!?


宴の時に" 魔王の噂 "について聞こうとするが上手くはぐらかされてしまう。
いや、ただ単にあれは勇者の血筋自慢をしたかっただけなのか?


どうにもこの村の連中とは話が噛み合っていない気がする。


だが、それも今夜までだ。昼間の" 勇者決定戦 "が終わり、村人たちから期待の目を向けられたが、

「今回の我々の旅の目的は勇者を決める為ではない。」


そうハッキリと言った。やっと言ってやったのだ!



その途端の村人からの失意の視線、村長の息子のケンが『だったら無駄な事させんなよ!』の一言に" 何故、俺が責められねばならない!"と思った。


お前らが勝手に盛り上がって訳の分からない事を始めたんだろうがっ!


と腹が立ったが、それよりもディーンの発言の方が気にかかる。


「我が主が言葉足らずで申し訳ありません。

魔王討伐は万全の準備をしてもし足りない程、過酷な旅路となるでしょう。
今回、先触れも無く勇者村の皆様に会いに来たのは、皆様にを促したかったのです。」


「覚悟、ですか?」


村長のルーベルトが" 何の覚悟だ?"という顔をしているが俺もそう思う。


オイ、一体何の話をしているんだ、ディーンよ。


「はい、そうです。魔王討伐の旅は一年、二年、はたまた十年掛かるかも知れない終わりが容易に見えない旅となる事は、過去の勇者様たちの物語にも語られている真実です。

皆様は明日、旅に出て五年、十年とこの村に帰らない覚悟はおありですか?

我々はまだ勇者パーティの要、聖女様すらお迎え出来ておりません。いくら勇者様がいようとも聖女様あっての魔王討伐と言っても過言ではありません。

勇者様が魔王を討伐出来たとしても魔素にやられた魔獣や魔物どもは元の姿には戻らず、魔王を倒しても残った魔物を討伐し続けねばならないでしょう。

それには一体、どれほどの年月が必要になる事か、、、。

聖女が旅の途中で教会や神殿で祈りを捧げれば、魔素は浄化され魔物化した獣も元の姿に戻り、勇者たちの助けとなり魔王討伐の旅も長引く事はないでしょう。


そして我々は魔王討伐の旅に出立する日の為に、皆様に心の準備をして頂きたかったのですよ。
愛する者との別れの時間をおざなりになどしてはいけません。


、皆様は出来る限り毎日を悔い無くお過ごし下さい。

皆様はきっとその日の為にもっともっと強くなっているのでしょう!
そして愛する家族との暫しの別れもキチンとお済ましになっている事と思います。

その為にこの度は勇者村へと来たのです。

そう、ジョセフ殿下は仰りたかったのですよ。」


「そ、そうだったのか!」

「確かに別れの時間は必要だ。残されたモンの暮らしもあるからな。」

「確かに魔王との戦いの為にもっと強くならにゃいかん。」


村人たちはディーンのそれらしい言葉に頷いている。適当に言っているだけだぞ?

コレ、またこの村に" 勇者決定戦 "を見に来なきゃならないのか?



村人たちのこのやる気、ど~すんだよ、ディーン!


何、ちゃっかり胴上げされちゃってんの、お前。
俺をフォローしたんじゃなかったのかよ!


俺はなんだかスッキリしない気持ちだったが、勇者村を出る最後の夜、かなり酔った村長たちの口から" 魔王の噂 "の真相を知る事になる。


「あぁ、そりゃウィルの息子だぁ。」


" 魔王の生まれ変わり "の噂話について様子を伺いながら聞けば、アッサリとルーベルトは言った。周りの村人たちも一緒になって頷いている。


噂の筈が随分と具体的に誰、と分かっているのだな、と思って更に理由を聞いて見ればあまりの事に驚きを通り越して一気に酔いも醒める。

「黒髪赤瞳の不気味なガキだったなぁ。」

「生まれてすぐに母親を殺したどころか、己れの正体を知った産婆まで殺しちまって。」

「だが、まだ魔王もガキだからな、俺んちの小僧が石を投げたら避けられずに血を流してたってよ。」


「そうだ、そうだ。それで俺たち勇者の血筋のもんに恐れをなして親子で村から逃げ出したんだっけなぁ。」


そう口々に、まるで自分たちが正義だ、というように自慢げに語っている村人の姿は俺には醜悪な化け物のようにしか見えなかった。


詳しい話を酔っ払いから根気強く聞いて更に恐怖心のようなモノが芽生えてくる。


コイツらは、、、何を言っているのだ?


村に黒い髪を持ち赤い瞳の男の子が生まれた。


その母親は出産の際に命を落とした。

それから半年後に酔っ払って川に落ちて産婆が亡くなった。


それがどうして" 魔王の生まれ変わり "でという話になるのだ?


しかもその親子を村人総出で冷遇し、子どものした事とはいえ、無抵抗の二歳の子どもに石をぶつけて怪我させただと!?


そんなの、息子が殺されかければ親なら誰だって子どもを連れて逃げ出すだろう!


なのに何故、コイツらはそれを武勇伝みたいに語るのだ?誰一人それを疑問に持たずに。


俺は急に背中から冷えていくような何か恐ろしい気持ちになってゴクリと唾を飲み込む。


この村は、、、おかしい。


村人もじゃない。



こんな村、こんな村ならば



翌日、俺は二日酔いのテオたちを叩き起こし、村長たちへの挨拶もソコソコに当初の目的のアサド村へと出発した。


もう二度とこの村へ足を踏み入れたくない、と強く願って。






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