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ガーナの街にて
閑話 その頃の王子たち〜なんでこんな事に!?〜 3
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勇者村での『歓迎の宴』と『ジョセフ殿下と行こう!魔王討伐の旅 勇者決定戦』は村人総出で三日三晩続いた。
なんでこんな事にっ!?
第一回『ジョセフ殿下と行こう!魔王討伐の旅 勇者決定戦』が終了した時、ーー 因みに優勝者は村長のルーベルトだった。忖度か?忖度なのか? ーー 成人男性八名の勇者決定戦のあまりの、、、あまりの緩い試合に半目になりながら私の横でシレっとしているディーンを問いただしてしまった。
「何故、我々の素性をバラしたんだ。しかも何故、勇者を迎えに来た事になっている?」
「私がバラす訳ないでしょう。馬車で通りがかった彼らに
『高貴な旅人のお方、そこで何をしていらっしゃるのでしょうか?』
と聞かれたので私は
『いえ、本当の高貴なお方は今、王都からある人物を探しに森の中に入っていますよ。』
と答えただけですよ?そうしたら
『王都ですか!それは長旅でさぞお疲れの事でしょう。是非、私たちの村で疲れを癒して下さい。お探しの人物もきっと村に居る事でしょう。』
と言われたのですよ。ですからもしや聖女様が保護されているのか、と村長の誘いに乗って村まで足を運んだのです。
結果的にここには聖女様は居ませんでしたが。」
ディーン、湯浴みの言葉にホイホイと誘われて村に行った事はバレてんだぞ?
しかも結構ヒントと誤解されるような言葉を言っているじゃないか!
「殿下~!どうでしたか、私の勇姿は?剣神と称えられる殿下には敵う訳はありませんが、いやぁ、あと十年早く迎えに来てくれていれば互角に戦えたかも知れませんなぁ。ハッハッハッ。」
木剣を片手に清々しい笑顔で戻って来るルーベルトに何て声を掛ければ正解なんだ?
「そ、そうだな。十年早ければ私は十二歳だからな。負ける事もあっただろうな。」
「うっわぁ。全然褒めてないぃ~。」
私の左隣に座っていたテオドアがクスクスと笑っている。
「ハッハッハッ。殿下は中々愉快な方ですなぁ。さぁ、宴の準備が出来た様ですので行きましょう。今夜は明日に備えて早めに宴を終了しますぞ。」
「明日?」
私たちが明日には出発したいと思っている事を察してくれていたのだろうか。
それならば先ほどの試合は我々を送り出す為の余興のようなモノであったのか。
なるほど。この村らしい余興ではあったな。
「はい、何しろ勇者決定戦ですからな。あらゆる角度から勇者を決定しなければいけません。
明日は成人男性にはハンデを付けて女子どもも試合に臨みます。
勇者とて幼少期はあるものです。勇者は成人男性と決め付けるのは愚か者のする事ですからな。」
待て。ならば何故、今日成人男性八名での勇者決定戦をしたのだ?
ハンデ云々というならば今日の試合でそれをしても良かったのではないか?
疑問しか浮かばない。閉鎖的な場所で暮らし続けると考え方が独特なものになってしまうのか?
一先ず、心を落ち着けよう。
そうだ!この後の宴でさりげなく聖女を目撃した者が居ないか、聞いてみよう。
それに『魔王誕生』の噂の出所はこの村だと言われていたな。事の真偽を確かめる良い機会だ。
そうだ!この村に滞在する意味は有ったのだ!
宴で聞くには丁度良いだろう。酒が入れば人の口は軽くなるものだ。そうだ。そうだよな。きっとこれも女神ナーシャ様のお導きだったのだ。
私は半ば自分に言い聞かせるように勇者村に滞在する意義を見出して、その夜の宴に臨んだのだった。
なんでこんな事にっ!?
第一回『ジョセフ殿下と行こう!魔王討伐の旅 勇者決定戦』が終了した時、ーー 因みに優勝者は村長のルーベルトだった。忖度か?忖度なのか? ーー 成人男性八名の勇者決定戦のあまりの、、、あまりの緩い試合に半目になりながら私の横でシレっとしているディーンを問いただしてしまった。
「何故、我々の素性をバラしたんだ。しかも何故、勇者を迎えに来た事になっている?」
「私がバラす訳ないでしょう。馬車で通りがかった彼らに
『高貴な旅人のお方、そこで何をしていらっしゃるのでしょうか?』
と聞かれたので私は
『いえ、本当の高貴なお方は今、王都からある人物を探しに森の中に入っていますよ。』
と答えただけですよ?そうしたら
『王都ですか!それは長旅でさぞお疲れの事でしょう。是非、私たちの村で疲れを癒して下さい。お探しの人物もきっと村に居る事でしょう。』
と言われたのですよ。ですからもしや聖女様が保護されているのか、と村長の誘いに乗って村まで足を運んだのです。
結果的にここには聖女様は居ませんでしたが。」
ディーン、湯浴みの言葉にホイホイと誘われて村に行った事はバレてんだぞ?
しかも結構ヒントと誤解されるような言葉を言っているじゃないか!
「殿下~!どうでしたか、私の勇姿は?剣神と称えられる殿下には敵う訳はありませんが、いやぁ、あと十年早く迎えに来てくれていれば互角に戦えたかも知れませんなぁ。ハッハッハッ。」
木剣を片手に清々しい笑顔で戻って来るルーベルトに何て声を掛ければ正解なんだ?
「そ、そうだな。十年早ければ私は十二歳だからな。負ける事もあっただろうな。」
「うっわぁ。全然褒めてないぃ~。」
私の左隣に座っていたテオドアがクスクスと笑っている。
「ハッハッハッ。殿下は中々愉快な方ですなぁ。さぁ、宴の準備が出来た様ですので行きましょう。今夜は明日に備えて早めに宴を終了しますぞ。」
「明日?」
私たちが明日には出発したいと思っている事を察してくれていたのだろうか。
それならば先ほどの試合は我々を送り出す為の余興のようなモノであったのか。
なるほど。この村らしい余興ではあったな。
「はい、何しろ勇者決定戦ですからな。あらゆる角度から勇者を決定しなければいけません。
明日は成人男性にはハンデを付けて女子どもも試合に臨みます。
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そうだ!この村に滞在する意味は有ったのだ!
宴で聞くには丁度良いだろう。酒が入れば人の口は軽くなるものだ。そうだ。そうだよな。きっとこれも女神ナーシャ様のお導きだったのだ。
私は半ば自分に言い聞かせるように勇者村に滞在する意義を見出して、その夜の宴に臨んだのだった。
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