美化係の聖女様

しずもり

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ガーナの街にて

魔法の勉強

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買い物疲れでぐったりしているジョージ君に魔法の本を借りて午後は魔法の勉強を一人でする事にした。
 流石にジョージ君を付き合わせるのは気が引けたので、本を読んでから必要な箇所を書き写し、理解したら実際に実践の練習をする。


 正直、元彼ヤツが私の部屋に置きっ放しにしていた物は案外と役に立っている。不用品を売る事でお金もゲット出来たし、この際使える物は私情を抜きに使うと改めて決めた。


だって腹の立つはこの世界には居ないのだ。


物には罪は無し、と割り切って私の糧として役立ってもらわないと割に合わないと思う。何しろ、ヤツの私物だった物ではあるけれど、その殆どが私が購入したんだからね。


という事で、魔法について重要そうなところを記入する為に使ったのは、『ノート職人拘りの本革製カバー付きシステム手帳』だ。中々に手触りの良い一品に満足だ。

こればっかりは三日坊主のヤツに感謝したい。いや、三日も使って無かったから一枚抜き取るだけで済んだ。

一通り本を二度読んで、次にシステム手帳に書き写した内容を確認する。


まず魔法を使うのはイメージが重要なのだとか。


イメージねぇ。魔法っていうと子どもの頃に見たテレビアニメの魔法少女を思い出す。後はやっぱりだよね。小説が世界中で売れて映画にもなったメガネ少年の話。


どっちも魔法のステッキとか杖とかを使って魔法を使っていたけれど、ジャックさんも使っていなかったしそういう記述は本には一切無かった。それに魔法の呪文というか詠唱の言葉も短いし無詠唱でも魔法は使えるのだそうだ。


まぁ、無詠唱と言いつつも心の中で唱えるか魔法を使っている具体的なイメージが傍目から無詠唱として見えているのかな。


私の場合は心の中で唱えていたから出来た?


でも無詠唱って応用みたいなものだよねぇ。基礎としてしっかりと詠唱して身につけてから無詠唱の方がいいかな。

取り敢えず、必要なところは書き写ししたから、ちょっと試してみよう。


そう思ってベッド脇の床に揃えて置いてある靴を見た。森の中を歩いて土や埃のついたランニングシューズは元は白地にピンクのラインが入ったものだったけど、今は茶色い靴のようだ。この世界ではこういう靴はないそうでメアリーさんたちに珍しがられたんだよね。


他に靴を持っていなかったから、目立たない様に汚れたままにしていたんだよね。今日、靴も買ったからランニングシューズは洗って収納しようと思っていたからちょうど良い。


よしっ、『クリーン』だ!


じぃーっとランニングシューズを見つめて、購入したばかりの時を頭の中で思い出す。その状態になる様に何度もイメージする。


「クリーン!」


しっかりとイメージが固まったらランニングシューズに向かって言葉に出してみた。


一瞬、白っぽく光ったと思ったらランニングシューズは新品の頃の様な状態に戻った。


「やったぁ!出来た!どれどれ、、、。」


ベッドから降りて履いてみる。ん?気のせいか踵部分が前より履き心地がいいような?

サイズぴったりのこのシューズは踵部分が少し硬くて気をつけないと靴擦れが出来やすかったんだよね。でも今はいい感じの履き心地だ。魔法を使うとそういうのも改善されるのかなぁ。


取り敢えず『クリーン』は使えたけれど、イメージを作って魔法を使うまでの時間が長い。もっと早くしっかりとイメージを作れる様に何度も練習あるのみ、だね。


夕食の仕込み時間までひたすら目についた物を片っ端から『クリーン』を試し続けた。『クリーン』と唱える度に、パァっと白く光るのがちょっと面白かったというのもあるけれど。


本には魔力量によって使える魔法も違うし、魔法を使えば魔力は消費され魔力が限りなくゼロになると倒れたり体調不良を起こすので注意が必要だ、と書かれていた。


私の魔力量がどのぐらいなのかは分からないけれど、体調が悪くなったりはしなかったので、『クリーン』はそんなに魔力を使わない魔法なのかもしれない。
 でも何かあった時のために魔力量は調べておいた方がいいかも。ジョージ君にどうやったら調べられるのか、後で聞いておこう。






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