美化係の聖女様

しずもり

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ガーナの街にて

新しいメニューと黒いモヤ

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店の隅の席近くに見える黒いモヤ。壁やテーブルは濃い茶色い板だけれど、位置的に光の加減で出来た影が、黒いモヤの様に見えるのかとも考えた。でもなんとなく違う感じがするんだよね。


 結局、時間が無かったので下準備が終わった後に、ササッとテーブルを拭くついでに、隅の席だけ少しだけ念入りに拭いた。少し黒っぽさが消えたかも?明日になったらもっとしっかり掃除しよう。


そうこうしている内にパラパラとお客さんが入り始める。新しいメニューを出すにあたって、少しだけ作戦を考えた。


まぁ、別に作戦という程のモノでは無いけど。『売れ残ったら、私が後で食べます!』と宣言して、新しいメニューの宣伝として予め料理を作って厨房付近に並べて置いた。

イメージは飲食店のガラスケースにサンプル食品を並べてあるアレ。


文字だけでは分からないし目の前にあれば匂い効果もあって興味を引きやすいハズ。


そうしてみたら、お客さんはやっぱり気になるようで、ルーナさんたちに『コレは何だ?』と興味を示して注文が入るようになった。

注文が入れば、サンプルが無くなっても今度はお客さんが食べているのを見て、他のお客さんの興味を引けるよね。


新しいメニューは、今日は元のメニューをアレンジしてみた。『鶏肉とキノコのスープ』は昨日の残りを飲んでみたら、何もしなくても十分美味しかった。

だから態々わざわざ変えなくてもいいんじゃないかなぁ。聞けば、元々ルーナさんが手伝って作っていたんだって。

でも、材料がほぼ一緒の料理で『鶏肉とキノコのトマトクリーム煮』というのがあったから、それも提案してみた。作り方も難しくは無かったからね。


結果、いつもの半分の量は、トマトのクリーム煮になった。でも、赤い見た目はちょっとビックリしそうだから、マグカップでの販売にした。その方が価格も抑えられるから『試しに食べてみようかな?』という気になるしね。


マッシュポテトは、少し深めの耐熱皿に入れて、その上に半熟茹で卵を輪切りにして乗せて鶏肉入りのホワイトソースを入れて『ポテトグラタン』に。

勿論、ついでにシチューの作り方も教えたよ。ルーナさんはトマトのクリーム煮を気に入ってくれたみたいだから、当分店に出る事は無さそうだけど。


鶏の丸焼きは下味をつけてオーブンで焼くだけの料理だった。だから、ローストチキンっぽくしたらどうかな、とお試しで2羽作ってみた。米が欲しいところだったけど無いものは仕方がない。


中身は、パンを一口サイズに切ったのをホワイトソースに混ぜて、鶏肉の中に入れてみたのと、マッシュポテトを入れたもの。それをキノコやじゃがいもたちと一緒にオリーブオイルをかけながらオーブンで焼いた。

焼けた後は、もう一度、後掛けで出す時にホワイトソースを掛けて出したら好評だった。

後は『焼き鳥、塩』、『椎茸、ピーマンの肉詰め』。それ以外はいつものステーキというメニューだった。

椎茸とピーマンの肉詰めは、今日、どうしても使い切ってしまいたかった牛肉があったから。客足減っても、ある程度は仕入れをしないと、で購入していた分が売れ残っていたんだって。

でもそのままでは注文が入るか不安だったみたいだから、使い切りたい分の牛肉と少し豚肉を足してひき肉のように刻んで作った。ソースはやっぱり今日のところはトマトソースで妥協した。


今日来ているお客さんの反応は、最初は戸惑っていたけれど、食べてみたら予想外の味だったみたいで概ね好評だったと思う。

明日以降も新しいメニューが増えるからね、とルーナさんがお客さんたちに触れ回っていたけれど、まだ何を作るか、決めていないからね?


それでも、なんとか期待に応えられたか、とホッとしていたら、上から誰かが下りてくる足音が聞こえて振り向いた。


振り向いた先に居たのは、中年男性だった。見た瞬間に驚いて声を上げそうになったけれど、それより先に声を出した人がいた。


「リカルド・・・。」


ルーナさんは何も言わずに食堂の席に向かって歩く男性を、給仕の手を止めて見ていた。


この人がルーナさんの夫のリカルドさん、か。


リカルドさんの背中を見ていると、に向かって歩いていく。

リカルドさんを見た瞬間に、そういう予感はしていた。でもアレは予想つかなかったよ。


リカルドさんが、店の隅の席に座ると、壁際にほんのり残っていた黒いモヤが、いきなりサワサワと動いて、リカルドさんにくっついた、ように見えた。


そしてリカルドさんの右肩から肘の辺りの黒いモヤモヤが勢いよく動き出した。


何あれっ!?


私でも知っている国民的アニメのみたいなやつ!何でそれっぽいのがいるの?

しかも、人から逃げるんじゃなくて、喜んでリカルドさんに近寄っているように見えるんですけど?







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