美化係の聖女様

しずもり

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ガーナの街にて

ルーナさんの宿屋

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隣の街ガーナには昼過ぎに無事に着いた。お客は何と私一人だった。

昨日、アサド村に来る時も荷物を運んで来ただけだったそうで、荷物の行き来だけの時の方が多いとか。だから手紙なんかも預かってくれるらしい。宅配業も兼ねているみたい。


そんな感じなので幌馬車は私一人の快適空間だった。やっぱりお尻が痛かったけど。


けれど一部の座席が少しだけ黒っぽく汚れていて、気になって気になって仕方なくて。どうせ私一人で暇だったので雑巾に洗剤をワンプッシュしてさりげなく拭いておいた。


途中、馬を休ませる為に休憩が入ったので、その時に御者のヘンリーさんにジャックさんの作ったコロッケパンを一つお裾分けした。


ヘンリーさんは初めて食べるコロッケに驚いて『これは何だ?』と詰め寄られたので、『じゃがいもで作った新しい料理だ』とサクッと説明しておいた。詳しく説明しても仕方ないしね。勿論、ジャックさんの食堂を宣伝しておいたよ。


ヘンリーさんはガーナに家族と住んでいるけれど、乗り合い馬車の仕事の関係でアサド村で泊まる時は御者仲間数人で借りた家に泊まるらしい。

仕事は他の御者さんと交代で3~4日に1度、アサド村に行っているそうなので


「他にも美味しい新作料理がありますよ。」


とお薦めしたら



「次に行った時に食堂で食べる!」


と喜んでいた。ガーナの街にも噂が広がってアサド村に来る人が増えればいいよね。



アサド村から6時間ほどかけて着いたガーナは確かにアサド村よりも大きく人も多かった。街並みも全く違って足元には石畳が広がっているし、大きな広場にはたくさんの屋台が並んで大勢の人たちが屋台で売られている物を食べたり買い物を楽しんでいる。


周囲にある建物にもカフェっぽいお店や洋服を売るお店に雑貨屋さんもある。これは若い人が憧れて村を離れていくのも分かるなぁ。残される方は寂しいけれど。


大荷物を抱えている私はやっぱり目立っているようで周囲からの視線を感じる。

取り敢えずメアリーさんに紹介された宿屋に急ごう!


場所はヘンリーさんに教わったので迷う事なく10分ほどで目的の宿屋に着いた。赤い屋根と三日月のマークみたいな絵の看板が目印の宿屋だった。


「こんにちは~。アサド村のメアリーさんの紹介で来ました。」


赤い色の扉を開けて入って見渡すと誰も居ないようだったので少し大きな声を出して言ってみた。


「はぁ~い。ちょっと待っててねぇ。」


少しして上の階の方から女性の声がして、パタパタと音を立てて赤茶の髪を肩辺りで揃えた女性が降りてきた。よく分からないけどメアリーさんよりは年配の人かな?


「あのメアリーさんにこの宿を紹介されてきたリオと言います。これ、メアリーさんからお手紙です。」


私は小さくお辞儀をして名乗るとメアリーさんから渡された手紙を女性に渡した。『リオの事はよ~く頼んでおくからね。』と言って渡された手紙だ。


リオは怪しい者じゃないから泊めてあげてね。


みたいな事が書いてあるのかな。


そうそう、手紙で思い出したけれど、言葉だけじゃなくて字も何故だか普通に読めた。見るからに知らない文字なのに読めるのだ。自動翻訳補正が掛かっているのだろうか。


でも残念ながら字は書けなかった。普通に日本の文字を書いてメアリーさんに見せたら『何これ?』みたいな顔をされて、日本文字はそのままだったみたいだ。


まぁ、当たり前だよね。日本文字を書いているつもりで、自動的にこの国の字を書いていたらちょっと怖いよね。


この国の文字を読めはするのだから書き順はよく分からなくても書けるようにはなりそうだよね。あいうえお表みたいな物があったら買って勉強してもいいかも知れない。


そんな事を考えていると、メアリーさんからの手紙を読んでいた女性の表情が段々と嬉しそうな顔になってきた気がする。


「良かった!これでリカルドもやる気を出してくれるかも知れないわ。えーと、リオ?メアリーから聞いているかも知れないけれど私はルーナよ。

ようこそ、『三日月亭』へ。それとここに滞在する間に店の調理を手伝ってくれるそうで助かったわ。その分、宿代は安くするからお願いね。

それと貴女に頼むと新しくて美味しい料理を作ってくれるんだって?期待しているわ。」


え?メアリーさんっ。聞いてないんですけどぉ~!
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